1. 「2割特例」のおさらいと終了時期
2割特例は、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった小規模事業者向けに設けられた負担軽減措置で、売上税額の2割を納めればよいというシンプルな計算方法です。仕入れの記録が不要なため、多くの個人事業主・小規模法人がこの3年間活用してきました。
この2割特例は、適格請求書発行事業者になった令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間が対象です。個人事業主の課税期間は暦年(1〜12月)なので、令和8年分(2026年分)の確定申告が2割特例を使える最後の年になります。
2. 令和9年分からの選択肢は3つ
計算方法 | 内容 | 対象・期間 |
|---|---|---|
3割特例 | 売上税額の3割を納付。2割特例からの緩やかな移行措置 | 個人事業主のみ |
簡易課税制度 | 業種ごとのみなし仕入率(例:小売業80%、サービス業50%)で仕入税額を計算 | 基準期間の課税売上高5,000万円以下の事業者(法人・個人とも利用可) |
原則課税(本則課税) | 実際の課税仕入れを積み上げて計算。仕入れが多い業種は有利になり得る | 制限なし |
どれが有利かは業種のみなし仕入率と実際の経費率の関係で決まります。たとえば仕入れがほとんどないコンサルティング業などは簡易課税(みなし仕入率50%)が有利になりやすく、逆に仕入れ・外注費の割合が高い業種は原則課税の方が有利なこともあります。
3. 簡易課税を選ぶなら「年内の届出」が必須
簡易課税制度は自動的に適用されるものではなく、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出して初めて使えます。原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに提出する必要があります。
実務メモ:個人事業主が令和9年分から簡易課税を使いたい場合、届出の期限は令和8年(2026年)12月31日までです。ただし2割特例・3割特例の適用を受けていた事業者については、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに届出をすれば、その翌課税期間から簡易課税の適用を受けられる経過的な緩和措置もあります。自社がどちらの規定に該当するかは、事前確認が必須です。
4. 法人は「3割特例」を使えない点に注意
3割特例は個人事業主に限定された措置です。2割特例を使ってきた法人(中小の同族会社など)は、2割特例終了後は簡易課税か原則課税のいずれかを選ぶ必要があります。法人成りを検討している個人事業主の方は、この違いも判断材料の一つになります。
5. どう判断すればよいか ― 決算・確定申告を待たない
簡易課税を選ぶかどうかの判断は、令和8年分の確定申告(令和9年3月)を待っていては手遅れになります。届出の期限は令和8年12月31日であり、確定申告よりも前に到来するためです。
判断のためには、直近の売上・仕入れの実績から、簡易課税と原則課税(または3割特例)のどちらが有利かを事前に試算しておく必要があります。目安として次の観点を確認してください。
- 自分の業種のみなし仕入率は何%か(卸売業90%・小売業80%・製造業等70%・その他事業60%・サービス業等50%・不動産業40%)
- 実際の課税仕入れの割合は、みなし仕入率より高いか低いか
- 来年以降、大きな設備投資の予定があるか(原則課税なら投資年に還付を受けられる可能性がある)
6. 実務のポイント
2割特例は「何も考えなくても済む」制度だっただけに、終了後の選択を先送りにしがちです。しかし届出期限(12月31日)は確定申告より先に来るため、年末になってから慌てて検討するのはリスクがあります。
簡易課税・3割特例・原則課税のどれが有利かは業種や取引実態によって変わるため、個人事業主の方は遅くとも秋頃までに一度試算しておくことをおすすめします。