1. 制度の全体像

対象設備の取得時は、即時償却か税額控除を選択
即時償却取得価額を初年度に全額経費化今期の利益を大きく圧縮
税額控除取得価額の10%資本金3,000万円超は7%通常償却と併用して正味の減税

中小企業経営強化税制は、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて一定の設備を取得した場合に、即時償却(取得価額を初年度に全額経費化)または税額控除(取得価額の10%、資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用できる制度です。

対象設備は4類型に分かれます。A類型(生産性向上設備)は工業会等の証明書、B類型(収益力強化設備)は経済産業局の確認書、D類型(経営資源集約化設備)はM&A関連の確認書、E類型(経営規模拡大設備)は給与増加目標に関する確認書が必要です。

2. 令和8年度改正のポイント

令和8年度税制改正で、工具・器具備品の取得価額要件が「30万円以上」から「40万円以上」に引き上げられました。少額減価償却資産の特例(VOL.05参照)の上限も40万円未満に引き上げられたため、40万円が制度の境目になります。

取得価額

使える制度

40万円未満

少額減価償却資産の特例(認定不要・年間300万円まで即時償却)

40万円以上

中小企業経営強化税制(経営力向上計画の認定が必要)・即時償却または税額控除10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)

3. 即時償却と税額控除、どちらが得か

即時償却は取得年度に大きな節税効果がありますが、その分翌年度以降の減価償却費が減るため、実質的には課税の先送りです。一方税額控除は、通常の減価償却を続けながら取得価額の10%を直接税額から差し引けるため、制度上は正味の減税になります。

実務メモ:「今期だけ利益が大きく出たので税額を大きく圧縮したい」なら即時償却、「毎期安定して黒字が出ており、着実に税負担を減らしたい」なら税額控除が向いています。税額控除には調整前法人税額の20%という上限があり、超えた分は1年間繰り越せます。

4. 手続きは「設備取得前」が原則

設備を買う前に、証明・計画・認定の順で準備
  1. 1制度・類型を選ぶ
  2. 2証明書・確認書を取得
  3. 3経営力向上計画の認定
  4. 4設備を取得して申告

A・B類型には取得後60日以内の申請例外がありますが、D・E類型では利用できません。原則どおり取得前に進めるのが安全です。

この制度で最も注意すべきなのはスケジュールです。工業会等の証明書・経産局の確認書は、設備取得前に申請する必要があります。経営力向上計画の認定を受けてから設備を取得するのが原則ですが、A・B類型では一定の要件を満たす場合、設備取得後60日以内に計画を申請する例外があります。D・E類型ではこの例外は利用できません。「決算対策で今すぐ設備投資をして即時償却したい」という場合、認定手続きが間に合わず、より手続きが簡易な中小企業投資促進税制(特別償却30%または税額控除7%、経営力向上計画の認定不要)を使わざるを得ないこともあります。

5. 実務のポイント

設備投資の節税効果を最大化するには、投資を決めるより前にどの制度が使えるか、即時償却と税額控除のどちらが自社に合うかを試算しておく必要があります。決算間際に慌てて相談されるケースが多いのですが、経営力向上計画の認定には一定の日数がかかるため、投資の半年以上前からのご相談をおすすめします。