西原公認会計士・税理士事務所

税務コラム VOL.16 / 法人税・欠損金

赤字は「10年間有効」な資産です ― 欠損金の繰越控除、中小法人は所得の100%まで使える

  • 青色申告の事業年度に生じた赤字(欠損金)は、10年間にわたって将来の黒字と相殺できる(平成30年4月1日前に開始した事業年度分は9年)
  • 資本金1億円以下の中小法人は、その年の所得の100%まで欠損金を控除できる。大法人は50%が上限
  • 古い事業年度の欠損金から順番に使う(先入先出)。10年を過ぎた欠損金は自動的に消滅し、二度と使えない
  • 要件は①欠損が生じた年度の青色申告、②その後の申告書の連続提出、③帳簿書類の保存の3点

1. 欠損金の繰越控除とは

法人税は原則として1事業年度ごとに所得を計算して課税しますが、それでは赤字の年と黒字の年で税負担が不公平になります。この不均衡を是正するのが「欠損金の繰越控除」です。青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金は、翌事業年度以降10年間にわたって、その年の所得から差し引くことができます。

創業初期の赤字や、一時的な業績悪化による赤字も、将来の節税につながる「資産」として管理する発想が重要です。

2. 中小法人は「所得の100%」まで控除できる

法人の区分

控除限度額

中小法人等(資本金1億円以下等)

所得金額の100%

大法人(資本金1億円超等)

所得金額の50%(平成30年4月1日以後開始事業年度)

中小法人は、過去の欠損金が十分に残っていれば黒字の年の課税所得をゼロまで圧縮できます。たとえば繰越欠損金1,000万円がある中小法人が当期800万円の黒字を出した場合、800万円全額を控除でき、当期の法人税はゼロ、残り200万円は翌期以降に繰り越されます。

3. 「先入先出」と「10年の壁」

複数年度にわたって欠損金がある場合は、最も古い事業年度に生じたものから順番に控除していきます。任意の年度を選んで使うことはできません。

実務メモ:繰越期間が10年(または9年)を過ぎた欠損金は、使い切れなければ自動的に消滅します。「そろそろ期限切れになる欠損金がいくら残っているか」は、決算の都度、別表七(一)で必ず確認してください。期限切れが近い欠損金がある場合、無理のない範囲で当期の利益計上を前倒しする、あるいは投資のタイミングを調整するといった計画的な対応が可能です。

4. 適用を受けるための3つの要件

  • 欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出していること(最も重要な要件です)
  • その後の各事業年度について、連続して確定申告書を提出していること(欠損が生じた年より後は白色申告でも適用自体は妨げられません)
  • 帳簿書類を保存していること

5. 増資や資本異動のタイミングに注意

繰越欠損金を多く抱える会社が増資などで資本金を1億円超に増やすと、その事業年度から大法人扱いとなり、控除限度額が100%から50%に縮小します。資金調達で増資を検討する際は、資本金を1億円以下に抑える、資本準備金として受け入れるなど、繰越欠損金の消化計画とあわせた検討が欠かせません。また、大法人による完全支配関係がある子会社(いわゆる「みなし大企業」)は、資本金が1億円以下でも中小法人の特例を使えない点にも注意してください。

6. 実務のポイント

繰越欠損金は「赤字だから関係ない」と見過ごされがちですが、青色申告の継続という最低条件を満たしていないと、将来の黒字化局面でせっかくの節税機会を失います。特に創業間もない会社は、初年度が赤字でも必ず青色申告承認申請を行い、期限内に申告書を提出し続けることが大切です。

過去の赤字がどれだけ残っているか、期限切れが近いものはないか、把握できていない場合は一度確認してみることをおすすめします。

※本記事は公開時点の法令等に基づいて作成しています。個別の適用可否については必ずご確認ください。

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