1. 欠損金の繰越控除とは

法人税は原則として1事業年度ごとに所得を計算して課税しますが、それでは赤字の年と黒字の年で税負担が不公平になります。この不均衡を是正するのが「欠損金の繰越控除」です。青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金は、翌事業年度以降10年間にわたって、その年の所得から差し引くことができます。

創業初期の赤字や、一時的な業績悪化による赤字も、将来の節税につながる「資産」として管理する発想が重要です。

2. 中小法人は「所得の100%」まで控除できる

中小法人は、黒字の100%まで欠損金と相殺できる
中小法人所得の100%まで繰越欠損金を控除可能
中小法人以外原則50%まで残りの所得には課税

法人の区分

控除限度額

中小法人等(資本金1億円以下等)

所得金額の100%

大法人(資本金1億円超等)

所得金額の50%(平成30年4月1日以後開始事業年度)

中小法人は、過去の欠損金が十分に残っていれば黒字の年の課税所得をゼロまで圧縮できます。たとえば繰越欠損金1,000万円がある中小法人が当期800万円の黒字を出した場合、800万円全額を控除でき、当期の法人税はゼロ、残り200万円は翌期以降に繰り越されます。

3. 「先入先出」と「10年の壁」

欠損金は古い年度から使い、10年で期限が来る
欠損が発生年度別に残高を管理
翌期以後の黒字古い欠損金から先に控除
10年経過未使用分は期限切れ

青色申告書の提出、欠損発生年度以後の連続申告、帳簿書類の保存が前提です。

複数年度にわたって欠損金がある場合は、最も古い事業年度に生じたものから順番に控除していきます。任意の年度を選んで使うことはできません。

実務メモ:繰越期間が10年(または9年)を過ぎた欠損金は、使い切れなければ自動的に消滅します。「そろそろ期限切れになる欠損金がいくら残っているか」は、決算の都度、別表七(一)で必ず確認してください。期限切れが近い欠損金がある場合、無理のない範囲で当期の利益計上を前倒しする、あるいは投資のタイミングを調整するといった計画的な対応が可能です。

4. 適用を受けるための3つの要件

  • 欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出していること(最も重要な要件です)
  • その後の各事業年度について、連続して確定申告書を提出していること(欠損が生じた年より後は白色申告でも適用自体は妨げられません)
  • 帳簿書類を保存していること

5. 増資や資本異動のタイミングに注意

繰越欠損金を多く抱える会社が増資などで資本金を1億円超に増やすと、その事業年度から大法人扱いとなり、控除限度額が100%から50%に縮小します。資金調達で増資を検討する際は、資本金を1億円以下に抑える、資本準備金として受け入れるなど、繰越欠損金の消化計画とあわせた検討が欠かせません。また、大法人による完全支配関係がある子会社(いわゆる「みなし大企業」)は、資本金が1億円以下でも中小法人の特例を使えない点にも注意してください。

6. 実務のポイント

繰越欠損金は「赤字だから関係ない」と見過ごされがちですが、青色申告の継続という最低条件を満たしていないと、将来の黒字化局面でせっかくの節税機会を失います。特に創業間もない会社は、初年度が赤字でも必ず青色申告承認申請を行い、期限内に申告書を提出し続けることが大切です。

過去の赤字がどれだけ残っているか、期限切れが近いものはないか、把握できていない場合は一度確認してみることをおすすめします。