西原公認会計士・税理士事務所

税務コラム VOL.18 / 法人税・グループ会社

「知らずに適用されている」制度、ご存じですか ― グループ法人税制、100%子会社を持つ会社は要注意

  • グループ法人税制は、100%の完全支配関係にある法人間の取引を対象に、選択の余地なく強制適用される制度
  • 100%グループ内の寄附金は全額損金不算入、受贈益は全額益金不算入になる
  • 簿価1,000万円以上の資産をグループ内で譲渡すると、譲渡損益がグループ外に出るまで繰り延べられる
  • 100%子会社を持つと、親会社側で中小企業向け優遇税制が使えなくなる場合がある

1. グループ法人税制とは ― 「選べない」制度

グループ法人税制は、100%の資本関係(完全支配関係)にある法人グループを、実質的に一つの法人であるかのように扱う制度です。連結納税やグループ通算制度と違って届出や選択の手続きは一切不要で、完全支配関係の要件を満たした瞬間から自動的に適用されます。

持株会社を設立して事業会社を100%子会社化した、資金調達目的で子会社を作った、といった中小企業でも、知らないうちにこの制度の対象になっているケースは少なくありません。

2. 寄附金・受贈益は「全額」不算入・不算入

通常、法人が支出する寄附金は損金算入限度額を超える部分が損金不算入になりますが、100%グループ内法人間の寄附金は限度額の計算をせず、金額にかかわらず全額が損金不算入です。逆に、寄附を受けた側の受贈益も全額が益金不算入になります。

実務メモ:キャッシュリッチな子会社から資金不足の兄弟会社へ資金を移動する際、贈与(寄附)の形にすれば課税関係を生じさせずに資金移動できます。ただし、寄附を行った側の親会社では、子会社株式の帳簿価額を減額修正する「寄附修正」が必要になるため、株式譲渡時の譲渡損益にも影響が及びます。この処理を忘れると、後日の株式売却時に申告誤りとなるおそれがあります。

3. 資産の譲渡損益は「繰り延べ」られる

100%グループ内で、土地・固定資産・有価証券(売買目的を除く)・金銭債権・繰延資産といった譲渡損益調整資産を譲渡した場合、その譲渡損益はグループ外への再譲渡や償却などの事由が生じるまで繰り延べられます。ただし、簿価1,000万円未満の資産は繰延べの対象外です。

「グループ内で不動産を移転すれば損益が消える」と誤解されがちですが、正確には損益がなくなるのではなく先送りされるだけです。将来グループ外に売却したタイミングで一気に課税が発生することを見越した資金繰り計画が必要です。

4. 中小企業向け優遇税制が使えなくなることがある

見落とされがちな注意点として、資本金1億円以下の法人でも、資本金5億円以上の大法人に完全支配されている場合、中小企業向けの軽減税率や交際費の定額控除(年800万円)、少額減価償却資産の特例といった優遇税制が使えなくなることがあります。持株会社の設立やM&Aで資本構成が変わる際は、こうした「みなし大企業」化のリスクも事前に確認しておく必要があります。

5. 実務のポイント

グループ法人税制は「知らなかった」では済まされない強制適用の制度です。持株会社化・グループ内再編・子会社の新設や100%化を検討されている場合は、実行前に寄附金・資産譲渡・優遇税制への影響を一通り確認することを強くおすすめします。

グループ会社をお持ちの経営者の方は、完全支配関係の有無や優遇税制への影響を一度整理してみることをおすすめします。

※本記事は公開時点の法令等に基づいて作成しています。個別の適用可否については必ずご確認ください。

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