1. 「15%」は所得全体ではなく「800万円まで」の部分
中小法人の軽減税率でよくある誤解が、「所得が800万円を超えたら全部23.2%になる」というものです。実際は800万円以下の部分にだけ15%が適用され、超えた部分にのみ23.2%が適用される2段階の計算です。
計算例:課税所得1,000万円の中小法人の場合
①800万円×15%=120万円
②(1,000万円-800万円)×23.2%=46万4,000円
③合計:166万4,000円
2. 適用対象と、対象から外れるケース
対象となるのは資本金1億円以下の普通法人(中小法人等)です。ただし、資本金1億円以下でも次のいずれかに該当すると、軽減税率の対象外(本則の19%)になります。
- 資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人(グループ法人税制における「みなし大企業」)
- 前3事業年度の所得金額の平均が15億円を超える「適用除外事業者」
- グループ通算制度を適用している通算法人(令和7年4月1日以後開始事業年度から対象外)
3. 「所得10億円超」は800万円以下の部分も17%に
令和7年度税制改正により、所得金額が年10億円を超える事業年度については、800万円以下の部分に適用される軽減税率が15%から17%に引き上げられました。大半の中小企業には影響しませんが、急成長中の会社は該当する可能性があるため留意してください。
4. あくまで「時限措置」であること
本則の軽減税率は19%ですが、現在適用されている15%は租税特別措置法による時限措置です。数年ごとに延長が繰り返されており、直近では令和7年度税制改正で令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度まで2年延長されました。恒久的な制度ではないため、今後の税制改正動向を注視する必要があります。
5. 「800万円」を意識した決算対策
課税所得を800万円以下に抑えられれば、その部分の税率を8.2ポイント引き下げられます。決算前の利益調整として、次のような選択肢が考えられます。
- 役員報酬の水準の見直し(ただし個人の所得税・社会保険料とのトータルで判断)
- 中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制による設備投資の前倒し
- 賃上げ促進税制による税額控除の活用
- 少額減価償却資産の特例の活用
6. 実務のポイント
法人税だけを見て「800万円に抑えれば得」と単純に判断するのは危険です。役員報酬を減らして法人の所得を800万円に収めても、その分個人の所得税は減る一方、法人に利益を残すか個人に還元するかはトータルの税負担とキャッシュフローで判断すべき問題です。
決算月の2〜3か月前を目安に着地見込みの利益を試算しておくと、軽減税率の枠を活かした対策を落ち着いて検討できます。