1. なぜ圧縮記帳が必要なのか
補助金を受け取ると、その全額が受給した事業年度の益金(収入)として計上されます。一方、その補助金で購入した機械や設備は、耐用年数にわたって少しずつ減価償却費(損金)にしかなりません。結果として、「補助金は一括で課税、経費化は数年がかり」というタイムラグが生じ、初年度の税負担が大きく膨らんでしまいます。
これでは、事業支援のための補助金が、初年度の重い納税でその効果を半減させてしまいます。この矛盾を緩和するのが「圧縮記帳」です。
2. 圧縮記帳の仕組み ― 「課税の繰り延べ」
圧縮記帳を適用すると、取得した固定資産の帳簿価額を、補助金の額だけ圧縮(減額)して記帳できます。これにより、補助金収入と圧縮損が同時に計上され、その年の課税所得への影響が相殺されます。
計算例:国庫補助金300万円の交付を受け、500万円の機械装置(耐用年数5年・定額法)を取得した場合。取得価額を300万円圧縮し、帳簿価額200万円を基礎に減価償却します。補助金300万円の益金と圧縮損300万円が相殺され、その年の課税所得は増えません。ただし、翌期以降の減価償却費は圧縮後の200万円ベースで計算されるため、圧縮しなかった場合より各期の償却費(損金)は少なくなります。支払う税額の総額は基本的に変わらず、あくまで初年度の負担を後年に分散する効果です。
3. 対象となる補助金は限定列挙
圧縮記帳が使えるのは国庫補助金等、すなわち国・地方公共団体からの補助金・給付金(またはこれに準ずるもの)に限られます。中小企業向けで代表的なものには、ものづくり補助金・IT導入補助金・事業再構築補助金・小規模事業者持続化補助金などがあります。
独立行政法人などを通じて間接的に交付される補助金であっても、実質的に国からの補助金と認められる場合は対象になり得ます。ただし、すべての補助金が対象になるわけではないため、交付要綱や交付団体の案内で「圧縮記帳の対象になるか」を個別に確認する必要があります。
4. 適用のための要件
- 国・地方公共団体からの補助金等(またはこれに準ずるもの)であること
- 交付された事業年度に、交付目的に適合した固定資産の取得・改良に充てたこと
- 交付事業年度の末日までに返還不要が確定していること
- 会計処理上も圧縮記帳の経理をしていること(損金経理または積立金方式)
- 確定申告書に「圧縮記帳に関する明細書」(別表13)を添付していること
5. 見落としやすい2つの注意点
①償却資産税は「圧縮前」の取得価額で課税される
圧縮記帳で法人税の計算上は帳簿価額が下がりますが、市区町村の償却資産税(固定資産税)は圧縮前の本来の取得価額で申告する必要があります。会計上と償却資産税申告用の2つの取得価額を管理しなければならず、実務上の負担が増える点に注意してください。
②圧縮した資産を売却すると譲渡益が増える
圧縮記帳した資産を将来売却する場合、帳簿価額が低くなっている分だけ売却益(譲渡益)が大きくなり、その年の課税所得が増えます。設備の入れ替えや事業譲渡を予定している場合は、この影響も見込んでおく必要があります。
6. 実務のポイント
補助金の交付決定通知が来た時点で、対象になる固定資産の取得価額・耐用年数・圧縮記帳の要否をあわせて確認しておくと、決算時の処理がスムーズになります。
補助金の交付を控えている、あるいは既に受給していて処理に迷っている場合は、圧縮記帳を使うべきかどうかも含めて、早めにご相談いただくと安心です。