西原公認会計士・税理士事務所

税務コラム VOL.22 / 法人成り・消費税

「売上1,000万円で法人成り」はもう古い? ― タイミングを間違えると消費税の免税メリットを失います

  • 法人成りすると、個人事業主時代の売上に関係なく、原則として設立後最大2期は消費税の納税義務が免除される
  • 個人事業主の免税期間とあわせれば、理論上は最大4年間消費税を納めずに済む
  • ただしインボイス登録・資本金1,000万円以上・特定期間の売上(給与)1,000万円超のいずれかに該当すると、免税は使えない
  • 「売上1,000万円」だけで法人成りを判断するのは時代遅れ。所得税と法人税の税率差・社会保険料・インボイスの4軸で総合判断すべき

1. なぜ法人成りで消費税が「リセット」されるのか

消費税の納税義務は、原則として基準期間(2期前)の課税売上高で判定します。個人事業主として何年、いくら売上を上げていても、法人は個人事業主とは別の事業者として扱われるため、法人としての基準期間はゼロからスタートします。

つまり、個人事業主時代に売上1億円を超えていたとしても、法人成りした事業年度・翌事業年度は、原則として基準期間がない新設法人として消費税が免除されます。

2. 免税が使えなくなる3つのケース

ケース

内容

資本金1,000万円以上

設立時の期首資本金が1,000万円以上だと、1期目から課税事業者になる。資本準備金は資本金に含まれないため、出資額の半分までを資本準備金にする方法もある

インボイス登録

適格請求書発行事業者に登録すると、基準期間の売上にかかわらず課税事業者になる

特定期間の判定

設立1期目の前半6か月の課税売上高と給与等支払額の両方が1,000万円超だと、2期目から課税事業者になる

3. 決算期の決め方で免税期間が変わる

1期目をできるだけ長く設定すると、免税期間そのものが長くなります。たとえば7月に設立して6月決算にすれば、1期目は約11か月、2期目とあわせて約23か月の免税期間を確保できます。逆に、3月決算に合わせて1月に設立すると1期目はわずか3か月になり、免税期間も短くなってしまいます。

実務メモ:決算期は消費税だけで決めるものではありません。繁忙期を避ける、税理士事務所の繁忙期(3月・5月決算)を避けて対応品質を確保するといった観点もあわせて検討することをおすすめします。

4. 「売上1,000万円」だけで判断しない

従来は「個人事業主の売上が1,000万円を超えたら法人成り」が定番の目安でしたが、インボイス制度の定着や2割特例の終了(2026年9月)を踏まえると、この目安だけでは判断できなくなっています。実際には次の要素を総合的に見る必要があります。

  • 所得金額……所得税の累進税率と法人税率(中小法人は800万円まで15%)の差がどこで逆転するか
  • 消費税……2期免税をどこまで活かせる決算期か
  • インボイス……取引先が課税事業者中心か、一般消費者中心か
  • 社会保険料……法人化すると社会保険加入が原則義務化され、負担が増える

5. 実務のポイント

法人成りのタイミングは、一度決めてしまうと後から調整が効きにくい判断です。「消費税の免税期間を最大化する」「所得税と法人税のバランスを取る」「社会保険料の負担増を織り込む」を同時に満たす最適解は、事業内容や取引先構成によって変わります。

法人成りを検討されている場合は、決算期の設定や資本金額も含めて、具体的な数字で比較しながら決めることをおすすめします。

※本記事は公開時点の法令等に基づいて作成しています。個別の適用可否については必ずご確認ください。

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