1. 2つの制度は「選択適用」
セルフメディケーション税制は、正式には「特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例」という名前のとおり、通常の医療費控除の"特例"という位置づけです。そのため、同一年分の確定申告で両方を同時に適用することはできず、どちらか一方を選ぶ必要があります。
一度どちらかを選んで確定申告をした後、更正の請求や修正申告で選択を変更することもできません。「後から見直せばいい」という考え方は通用しないため、申告前の比較検討が重要です。
2. 2つの制度の違い
項目 | 通常の医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
|---|---|---|
対象 | 通院費・入院費・治療費・医薬品代など医療費全般 | 厚生労働省が指定する特定OTC医薬品のみ |
下限額 | 年10万円(所得200万円未満は所得の5%) | 年12,000円 |
控除上限額 | 200万円 | 88,000円 |
追加要件 | 特になし | 「一定の取組」(健診・予防接種等)を行っていること |
通院・入院が多い年は通常の医療費控除、大きな病気はないが市販薬をよく購入する年はセルフメディケーション税制、というのが基本的な使い分けの目安です。
3. セルフメディケーション税制の「一定の取組」とは
セルフメディケーション税制を使うには、その年に次のいずれかの「健康の保持増進及び疾病の予防への取組」を行っている必要があります。
- 健康保険組合等が実施する健康診査(人間ドック等)
- 予防接種(定期予防接種・インフルエンザワクチン等)
- 勤務先で実施する定期健康診断(事業主健診)
- 特定健康診査(メタボ健診)・特定保健指導
- 市区町村のがん検診
実務メモ:会社員であれば勤務先の定期健康診断を受けていれば要件を満たしますが、個人事業主の方は意識的に人間ドックや自治体のがん検診などを受けておく必要があります。年末になって「今年は何も受けていなかった」と気づいても、その年分の適用はできません。取組の結果通知表・領収書は5年間保存が必要です。
4. 対象医薬品の見極め方
対象となるOTC医薬品は、パッケージに共通識別マークが表示されているほか、購入時のレシートにも対象品目である旨が印字されます。ただし、店舗によっては表示に誤りがあることもあるため、厚生労働省が公表する対象品目一覧で商品名を照合するとより確実です。また、対象成分の見直しが行われることもあり、ある年は対象だった医薬品が翌年は対象外になるケースもあるため、購入のたびにレシートの表示を確認する習慣をつけておくと安心です。
5. 適用期限は「令和8年12月31日」まで
セルフメディケーション税制は、平成29年(2017年)に始まり、これまで延長を重ねてきた時限措置です。現行の適用期限は令和8年(2026年)12月31日までとなっており、この記事を書いている時点でこれ以降の延長は決まっていません。今年、対象医薬品の購入やこの制度の活用を検討している方は、まさに期限内の今年が対象になります。今後の税制改正で延長・見直しが行われる可能性はありますが、現時点の情報として押さえておいてください。
6. 実務のポイント
医療費控除・セルフメディケーション税制のどちらが有利かは、通院・入院費とOTC医薬品購入額の実際の割合で決まるため、一律には言えません。病院の領収書と薬局のレシートを月ごとに分けて集計しておくと、年末の判断がスムーズになります。
家族分も含めた1年間の医療費・OTC医薬品購入額の集計や、どちらの制度が有利になりそうかの見立てに迷う場合は、確定申告の時期を待たず、お気軽にご相談ください。