1. なぜ自社株の評価が必要なのか
上場株式は市場価格がありますが、非上場会社の株式には市場価格がありません。しかし、相続・贈与・自己株式の取得・従業員への譲渡など、株式が動く場面では必ず税務上の評価額(株価)が必要になります。特に業績の良い会社ほど株価は高くなりがちで、後継者に多額の贈与税・相続税負担がのしかかる原因になります。自社株の評価を理解することは、事業承継対策の出発点です。
2. 評価方法は「誰が」「どんな会社」で決まる
評価方法は、まず誰が株式を取得するかで分かれます。経営を支配する立場にある同族株主等が取得する場合は原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式)、経営に関与しない少数株主が取得する場合は配当還元方式(過去の配当実績をもとにした簡便な評価で、通常は原則的評価方式より低くなる)が使われます。
原則的評価方式の中でどの方式を使うかは、会社規模(大会社・中会社・小会社)によって決まります。会社規模は、①従業員数、②総資産価額、③取引金額(売上高)の3つの基準で判定し、規模が大きいほど上場企業に近い評価(類似業種比準方式)を用いる考え方です。
3. 3つの評価方式の考え方
評価方式 | 考え方 |
|---|---|
類似業種比準方式 | 事業内容が類似する上場企業の株価をベースに、配当・利益・純資産の3要素を比較して評価。主に大会社で使用 |
純資産価額方式 | 会社を今解散したと仮定した場合に、株主に返ってくる財産(相続税評価ベースの純資産)で評価。主に小会社で使用 |
併用方式 | 2つの方式を一定割合で組み合わせる。中会社で使用(規模により類似業種比準方式90%・75%・60%の3段階) |
一般的に類似業種比準方式の方が純資産価額方式より株価が低く算定される傾向があり、実際に両方式を計算した上で有利な方(低い方)を選べる場合は、そちらを採用するのが実務上の基本です。
4. 会社規模の判定によって株価が大きく変わる
会社規模の判定は業種(卸売業・小売サービス業・その他)によって基準額が異なり、従業員数が70人以上なら無条件で大会社となるなど、細かいルールがあります。中小企業の多くは中会社〜小会社に区分されますが、規模区分が1段階変わるだけで、適用する評価方式の組み合わせが変わり、株価が大きく上下することもあります。決算書の数字(総資産・売上高・従業員数)をどう扱うかによって、評価結果に差が出る点に注意が必要です。
5. 「特定の評価会社」は例外扱い
次のような会社は、会社規模にかかわらず原則として純資産価額方式のみで評価されます。
- 総資産に占める株式等の保有割合が高い会社(株式等保有特定会社)
- 総資産に占める土地等の保有割合が高い会社(土地保有特定会社)
- 開業後3年未満の会社、比準要素(配当・利益・純資産)がほぼゼロの会社
- 開業前・休業中・清算中の会社
実務メモ:持株会社化や資産管理会社化を進めた結果、意図せず「株式等保有特定会社」に該当し、有利な類似業種比準方式が使えなくなるケースがあります。組織再編・資産構成の見直しを行う際は、自社株評価への影響も事前に確認しておくべきです。
6. 実務のポイント ― 株価は「上がってから」では遅い
類似業種比準方式は利益や配当に連動するため、業績が良い年ほど株価は上がります。事業承継税制(VOL.26参照)や生前贈与(VOL.27参照)を活用するにしても、株価が低いタイミングで動く方が税負担は軽くなります。
自社株の評価額を把握していないまま事業承継の時期を迎えると、想定外の高額な税負担に直面することがあります。後継者への引き継ぎを見据えている経営者の方は、一度、現時点での自社株評価額を試算しておくことをおすすめします。