1. 制度の基本 ― 取引先倒産に備える共済
経営セーフティ共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための公的な共済制度です。取引先が倒産した場合、無担保・無保証・無利子で掛金の最大10倍(上限8,000万円)までの共済金を借り入れられます。
この本来の目的に加え、掛金の全額が損金・必要経費として認められることから、決算対策・節税手段として広く活用されてきました。掛金は月5,000円〜20万円の範囲で自由に設定でき、前納すれば最大240万円(20万円×12か月)を一括で損金算入することも可能です。
2. 令和6年10月からの改正 ― 「解約→再加入」の節税封じ
従来、共済を解約してすぐに再加入すれば、新しい掛金をまた全額損金にできました。この仕組みを利用した「今期は業績が悪いので一旦解約して解約手当金を受け取り、来期また加入し直す」といった短期的な脱退・再加入が問題視され、令和6年度税制改正で制限されました。
実務メモ:令和6年(2024年)10月1日以後に解約した場合、再加入すること自体はできますが、解約日から2年を経過するまでの間に支払う掛金は損金・必要経費に算入できません(掛金の積立自体は可能です)。たとえば令和6年10月31日に解約し翌11月1日に再加入した場合、令和8年10月31日までの掛金は損金にならない、という計算になります。
3. 解約手当金は「全額課税」される
掛金を40か月以上納付していれば、解約時に掛金の全額が「解約手当金」として戻ってきます(12か月未満での解約は受け取れず、12〜39か月では8割程度に減額)。ただし、この解約手当金は受け取った年度の益金(法人)・事業所得の収入金額(個人)として全額課税対象になります。
つまりこの制度は、税金が減るのではなく、課税を将来に繰り延べる仕組みです。掛金を払うほど将来受け取る解約手当金も増え、益金も大きくなります。業績が良く多くの税負担が見込まれる年に多く掛け、逆に大きな損失が出る年や大型の設備投資を予定している年に解約するというタイミング調整が、この制度の節税効果を活かす本質です。
4. 見落としやすいデメリット
- 掛金の10倍まで借入できるが、実質的な金利負担はある……無利子とされていますが、共済金の借入を受けると、借入額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅する仕組みのため、実質的な負担がゼロではありません
- 40か月未満での解約は元本割れ……早期に資金が必要になり解約すると、掛金の全額は戻ってきません
- 解約手当金を受け取ったタイミングで想定外の黒字と重なると、かえって税負担が増すことがある
5. 小規模企業共済との違い
似た名前の制度に「小規模企業共済」がありますが、こちらは個人(経営者本人)が契約者となり、掛金は所得税の節税につながる制度です。経営セーフティ共済は法人(または個人事業主)が契約者となり法人税・事業所得の節税につながる制度で、性質が異なります。両方を組み合わせて活用している経営者の方も少なくありません。
6. 実務のポイント
経営セーフティ共済は、加入するタイミング(利益が伸びる期の初めから積み立てる)と、解約するタイミング(大きな損失や設備投資が見込まれる年)の両方を見据えて設計する必要があります。
既に加入されている場合も、今後の解約時期や再加入の要否について、決算対策とあわせて一度確認しておくことをおすすめします。