1. なぜ所得区分が重要なのか
同じ副業収入でも、事業所得か雑所得かで税務上の扱いは大きく異なります。事業所得なら青色申告特別控除(最大65万円)、赤字が出た場合の給与所得との損益通算、少額減価償却資産の特例(VOL.05参照)など数々の優遇が使えますが、雑所得はこれらがすべて使えません。かつて、副業を赤字の事業所得として申告し、本業の給与と損益通算して節税する手法が横行したため、国税庁は令和4年(2022年)に判定基準を明確化する通達改正を行いました。
2. 「帳簿があれば事業所得」という原則
当初の改正案は「収入300万円以下は一律雑所得」という単純な金額基準でしたが、パブリックコメントで7,000件を超える反対意見が寄せられ、最終的には「帳簿書類の保存の有無」を軸にする形に修正されました。
実務メモ:収入金額が300万円以下であっても、取引を記録した帳簿を作成し、保存していれば、原則として事業所得に区分されます。逆に、帳簿の保存がない場合は、収入300万円超で事業所得と認められる事実がある場合を除き、原則として雑所得として扱われます。「記帳しているかどうか」自体が、事業として行っている実態の証拠になるという考え方です。
3. 帳簿があっても雑所得になる例外
帳簿を保存していれば無条件に事業所得になるわけではありません。次のようなケースは、帳簿があっても雑所得と判定される可能性があります。
- 収入が僅少な場合……目安として、例年(概ね3年程度)の収入が300万円以下、かつ本業収入に対する割合が10%未満のケース
- 営利性が認められない場合……例年赤字が続いており、黒字化に向けた具体的な取り組みが見られないケース
要するに、帳簿の保存は事業性を判断する上での重要な一要素であって、それだけで自動的に事業所得が確定するわけではない、という位置づけです。
4. 収入300万円・1,000万円という書類保存義務のライン
雑所得(業務に係るもの)に区分される場合でも、収入規模に応じて次の書類保存義務があります。
- 前々年の収入が300万円超……現金預金取引等関係書類の保存が必要
- 前々年の収入が1,000万円超……確定申告書に収支内訳書等の添付が必要
- 前々年の収入が300万円以下……現金主義による所得計算の特例も選択可能(申告書へのその旨の記載が必要)
5. 暗号資産取引は「雑所得」が原則
この通達改正では、暗号資産の売却益のような「譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得」も雑所得の例示として明確化されました。株式の譲渡益のような申告分離課税は選べず、損失が出ても他の所得との損益通算や翌年以降への繰越控除もできません(VOL.43で詳しく解説します)。
6. 実務のポイント
副業を始める段階から、収入・経費を記録する帳簿をつけておくことが、事業所得としての扱いを受けるための第一歩です。会計ソフトを使った簡易な記帳でも構いません。
ご自身の副業がどちらの区分になりそうか、青色申告の要件を満たせそうかなど、判断に迷う場合はお気軽にご相談ください。