1. スキャナ保存とは ― 紙を電子化して「原本を捨てる」制度
スキャナ保存は、紙で受け取った(または紙で作成した)請求書・領収書・契約書などをスキャンまたはスマートフォン・デジタルカメラで撮影し、電子データとして保存する制度です。VOL.15で扱った「電子取引データ保存」が義務であるのに対し、スキャナ保存は任意の制度です。要件を満たして電子化すれば、紙の原本を保管し続ける必要がなくなり、書類保管スペースやファイリングの手間を削減できます。
2. 2022年改正で「事前承認」が不要に
2021年以前は、スキャナ保存を始めるために税務署長の事前承認が必要でしたが、2022年1月の改正でこの承認制度は廃止されました。現在は、要件を満たしさえすれば、届出なしで、環境が整い次第すぐにスキャナ保存を開始できます。
3. タイムスタンプ要件の緩和
スキャンした画像が改ざんされていないことを証明するタイムスタンプは、かつて3営業日以内の付与が必要でしたが、現在は最長約2か月と概ね7営業日以内まで猶予されています。
実務メモ:訂正・削除の履歴が残るクラウドシステム等を利用し、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことが確認できる場合は、タイムスタンプの付与自体が不要になります。多くのクラウド型経費精算システム・書類保存サービスはこの要件に対応しているため、システムを選ぶ際のポイントの一つになります。
4. 令和6年(2024年)改正でさらに簡素化
令和5年度税制改正により、2024年1月1日以後にスキャナ保存を行う国税関係書類については、次の点が不要になりました。
- 読み取り時の解像度・階調・大きさに関する情報の保存
- スキャンを行った入力者等の情報の保存
- 見積書・注文書等の「一般書類」については、帳簿との相互関連性の確保
帳簿との相互関連性(どの取引がどの帳簿記載に対応するかを追跡できるようにする要件)が必要なのは、契約書・領収書・送り状・納品書のように資金や物の流れに直結する「重要書類」に限定されました。これにより、日常的に大量に発生する書類の電子化の実務負担がかなり軽くなっています。
5. 導入時に整えるべき体制
- 入力期間内にスキャンできる体制・ルールを整備する(必要に応じて事務処理規程を作成)
- 解像度200dpi相当以上・24ビットカラー相当のスキャナ・カメラを用意する(通常のスキャナ・スマートフォンであれば概ね満たせる水準)
- タイムスタンプ付与サービス、または電子帳簿保存法対応システムのいずれかを選定する
- 検索機能の確保(取引年月日・取引金額・取引先で検索できること)
6. 実務のポイント
スキャナ保存はあくまで任意の制度であり、無理に導入する必要はありません。ただし、紙の保管スペースの削減やテレワーク環境での経費精算のしやすさを考えると、経費精算システムの導入とあわせて検討する価値のある制度です。
導入をご検討の場合は、自社の書類の種類・量に合わせた要件の確認や、システム選定についてお気軽にご相談ください。