西原公認会計士・税理士事務所

税務コラム VOL.47 / 消費税・インボイス手続き

「思い立ったら即、免税事業者」にはなれません ― インボイス登録の取消し、届出のタイミングで1年変わることも

  • インボイス登録を取り消すには「登録の取消しを求める旨の届出書」の提出が必要。効力発生は翌課税期間の初日から
  • 届出は翌課税期間初日の15日前までに提出しないと、効力発生が1年遅れて翌々課税期間になってしまう
  • 経過措置で免税事業者から登録した場合、登録から2年を経過する課税期間までは取り消しても免税事業者に戻れない(いわゆる「2年縛り」)
  • 高額特定資産を取得した場合の「3年縛り」(VOL.12参照)にも該当していないか、あわせて確認が必要

1. 取消しの基本手続き

インボイス発行事業者の登録をやめたい場合は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を、納税地を所轄するインボイス登録センターへ提出します。登録の効力が失われるのは、提出日の属する課税期間の翌課税期間の初日からです。

実務メモ:ポイントは「翌課税期間の初日から起算して15日前の日」という提出期限です。個人事業主や12月決算法人が翌年1月1日から取消しの効力を発生させたい場合、その年の12月17日までに届出書を提出する必要があります。これを過ぎると、効力発生は1年遅れて翌々課税期間の初日になってしまいます。「年内に出せばいい」ではなく、15日前という具体的な逆算が必要です。

2. 「2年縛り」に該当していないか確認する

インボイス制度開始(令和5年10月1日)にあわせて設けられた経過措置により、本来は免税事業者だった小規模事業者が、課税事業者選択届出書を出さずに登録申請書だけでインボイス発行事業者になった場合、登録開始日から2年を経過する日の属する課税期間までは、取消届出書を提出しても免税事業者に戻れません。

たとえば令和8年に登録した個人事業主は、令和9年末までは取消しの届出をしても効力が生じず、課税事業者としての申告・納税が続きます(この経過措置は令和11年9月30日を含む課税期間までの登録が対象です)。「登録さえ取り消せばすぐ免税に戻れる」という思い込みは禁物です。

3. 「課税事業者選択届出書」を出している場合は書類が2つ必要

免税事業者が「消費税課税事業者選択届出書」をあらかじめ提出したうえでインボイス登録をしているケースでは、登録取消届出書を提出しただけではインボイスが失効するのみで、消費税の納税義務そのものは消えません。この場合、免税事業者に戻るには、登録取消届出書とは別に「消費税課税事業者選択不適用届出書」も提出する必要があります。2種類の届出が必要なケースであることを見落とすと、「インボイスはやめたのに、なぜか消費税の申告義務だけが残っている」という事態になりかねません。

4. 高額特定資産の「3年縛り」との関係

VOL.12で解説したとおり、登録期間中に高額特定資産(税抜1,000万円以上)を取得していた場合、取得した課税期間の初日から3年間は免税事業者にも簡易課税にも戻れません。インボイス登録の取消し自体の要件(2年縛り)をクリアしていても、高額特定資産の取得歴があれば、こちらの3年縛りが優先して適用されます。両方の縛りを確認しておく必要があります。

5. 取引先への周知を忘れずに

登録を取り消したにもかかわらず取引先へ伝え忘れると、取引先は引き続きインボイス登録があるものとして仕入税額控除の処理を続けてしまうおそれがあります。これが税務調査で発覚すると、取引先に思わぬ迷惑をかけ、取引関係の悪化にもつながりかねません。登録取消しが確定したら、主要な取引先へ速やかに通知することが大切です。

6. 実務のポイント

インボイス登録の取消しは、①2年縛り・3年縛りの有無、②課税事業者選択届出書の提出有無、③15日前という提出期限、の3点を確認してから進める必要があります。判断を誤ると、「免税に戻したつもりが、あと1年課税事業者のままだった」という事態になりかねません。

登録取消しを検討されている場合は、いつから免税事業者に戻れるのか、事前にご確認ください。

※本記事は公開時点の法令等に基づいて作成しています。個別の適用可否については必ずご確認ください。

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