1. 原則 ― 基準期間がないから免税
消費税の納税義務は、原則として基準期間(法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるかで判定します。新たに設立した法人は、設立1期目・2期目には基準期間そのものが存在しないため、原則として納税義務が免除されます。ただし、この原則には複数の例外があり、現在では「設立2期は自動的に免税」と単純には言えません。
2. 例外①:資本金1,000万円以上の「新設法人」
事業年度開始の日における資本金または出資金の額が1,000万円以上である法人は、基準期間がなくても納税義務が免除されません。この判定は設立時の登記上の資本金で行うため、設立1期目の途中で増資をして1,000万円以上になっても、設立1期目自体には影響しません。ただし、その増資が反映された状態で2期目の期首を迎えると、2期目は課税事業者になります。
3. 例外②:特定期間の判定 ― 「2期目」も油断できない
資本金1,000万円未満で設立した場合でも、設立1期目の開始日から6か月間(特定期間)の①課税売上高、②給与等支払額のいずれもが1,000万円を超えると、設立2期目から課税事業者になります(いずれか一方が1,000万円以下であれば免税を維持できます)。
実務メモ:設立直後に大口案件が決まり売上が急増した場合や、積極採用で人件費が急増した場合、「気づいたら特定期間の基準を超えていた」というケースがあります。役員報酬の設定タイミングも給与等支払額に影響するため、設立時の資本金設計だけでなく、最初の半年間の売上・人件費の見通しも含めて計画しておく必要があります。なお、設立1期目が7か月以下の場合は、そもそも特定期間の判定自体が生じません。
4. 例外③:親会社の売上が大きい「特定新規設立法人」
資本金1,000万円未満でも免税にならないもう一つのケースが「特定新規設立法人」です。次の両方に該当すると、設立1期目・2期目から課税事業者になります。
- 特定要件……「他の者」(親会社や個人等)が新設法人の株式・出資の50%超を保有している
- 判定対象者の売上規模……その「他の者」またはその特殊関係法人のいずれかの基準期間相当期間の課税売上高が5億円超(令和6年10月以後は、国外分を含む売上・収入・収益の合計が50億円超の場合も対象)
かつては、売上高5億円超の親会社が資本金1,000万円未満の子会社を作って事業の一部を移すことで、消費税の免税メリットを享受する手法が使われていましたが、この特例によりそうした租税回避的なスキームは封じられています。持株会社化やグループ内での新会社設立を検討する際は、この判定を必ず確認する必要があります。
5. インボイス登録をすれば、そもそもこの議論は無意味になる
上記の判定はすべて「事業者免税点制度」の適用可否に関するものです。設立当初からインボイス発行事業者として登録している法人は、これらの判定にかかわらず納税義務が免除されません。取引先の多くが課税事業者で、インボイス登録が事実上必須という会社であれば、そもそもこの免税判定を気にする意味自体が薄れます。免税のメリットを重視するか、インボイス登録による取引の円滑さを重視するかは、事業内容によって判断が分かれるところです。
6. 実務のポイント
法人設立時の消費税判定は「資本金」「特定期間の売上・給与」「グループの支配関係」の3軸で確認する必要があり、単純な話ではなくなっています。設立を検討中の方や、グループ会社の新設を予定している方は、資本金の設計・決算期の設定とあわせて、事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。
新規法人設立をお考えの場合は、お気軽にご相談ください。