1. 外形標準課税とは ― 赤字でも課税される仕組み
法人事業税は本来、法人の所得に対して課税されますが、それだけでは赤字法人はいくら大規模でも行政サービスの対価を負担しないことになります。これを是正するため、資本金1億円超の大法人には、所得の有無にかかわらず事業規模(外形)に応じた課税(付加価値割・資本割)が上乗せされます。これが外形標準課税です。「資本金をちょうど1億円に設定する」企業が多いのは、この課税対象から外れるための代表的な工夫です。
2. なぜ制度が見直されたのか
外形標準課税の対象法人数は、制度創設時(平成15年)のピークから約3分の2まで減少しています。主な原因は、資本金だけを資本剰余金に振り替える「項目振替型減資」です。会計上の帳簿の付け替えだけで、企業の実態(従業員数・売上規模)は何も変わらないにもかかわらず、外形標準課税の対象から外れられてしまう問題が指摘されていました。同様に、持株会社化や事業部門の分社化の際、子会社の資本金をあえて1億円以下に設定して課税を回避する事例も増えていました。令和6年度税制改正は、この2つの「抜け道」をふさぐことを目的にしています。
3. 改正①「減資への対応」(令和7年4月以後開始事業年度)
前事業年度に外形標準課税の対象だった法人が、当事業年度に減資して資本金を1億円以下にしても、資本金と資本剰余金の合計額(払込資本の額)が10億円を超える場合は、引き続き外形標準課税の対象になります。
具体例:資本金5億円・資本剰余金55億円で外形標準課税の対象だった会社が、資本金を8,000万円に減資したとします。資本金だけを見れば1億円以下ですが、資本金+資本剰余金の合計は変わらず60億円のままなので、引き続き外形標準課税の対象になります。
4. 改正②「100%子法人等への対応」(令和8年4月以後開始事業年度)
次の要件をすべて満たす法人(子会社側の資本金は1億円以下)も、新たに外形標準課税の対象になります。
- 資本金+資本剰余金の合計額が50億円を超える法人(特定法人)による完全支配関係がある、またはそのような特定法人に発行済株式の全部を保有されている
- その子法人自身の資本金+資本剰余金の合計額が2億円を超える
持株会社化や事業部門の分社化で子会社の資本金を低く設定していても、親会社の規模(払込資本50億円超)と子会社自身の払込資本(2億円超)の両方の条件で判定されるため、資本金だけ低くしても課税を免れられなくなります。なお、新たに対象となる法人には、令和8年4月〜令和9年3月開始事業年度は増加額の3分の2減額、翌年度は3分の1減額という負担軽減の経過措置が設けられています。
5. 中小企業への影響は限定的、ただし確認しておきたいケース
今回の改正は、もともと大企業やその子会社を主なターゲットとしたものです。資本金1億円以下で、資本剰余金もほとんどない、独立した中小企業であれば、直接の影響はほぼありません。ただし、次のようなケースは念のため確認しておく価値があります。
- 大企業の100%子会社として事業を行っている、あるいはそうした企業とのM&Aを検討している
- 将来的に持株会社化を進める予定があり、グループ内に資本金の大きい会社が含まれる
- 資本準備金や資本剰余金を多く積んでいる会社で、将来的な増資・組織再編を検討している
6. 実務のポイント
外形標準課税の判定は会計上の資本金・資本剰余金で行われるため、法人税法上の「資本金等の額」とは基準が異なります。組織再編やM&A、持株会社化を検討している場合は、資本構成の設計段階でこの点も確認しておくことをおすすめします。
自社やグループ会社が対象になるかどうか判断がつかない場合は、お気軽にご相談ください。