西原公認会計士・税理士事務所

税務コラム VOL.54 / 法人税・グループ通算制度

黒字の親会社、赤字の子会社 ― グループ通算制度で複数法人の損益をまとめて考える

  • グループ通算制度は、完全支配関係(100%)にある企業グループ内で、黒字法人と赤字法人の所得を通算できる制度
  • 2022年4月に「連結納税制度」から移行。旧制度と異なり、各法人が個別に申告・納税する「個別申告方式」を採用
  • 1社に修正・更正事由が生じても、原則として他の法人には影響しない「遮断措置」がある
  • グループ内に資本金1億円超の法人が1社でもあると、グループ全体が中小法人向け特例の対象外になる

1. グループ通算制度とは

グループ通算制度は、親法人とその完全支配関係(100%)にある子法人からなる企業グループを対象に、各法人の所得と欠損を損益通算できる制度です。たとえば親法人が1億円の黒字、子会社が3,000万円の赤字であれば、グループ全体の課税所得は7,000万円に圧縮され、そこから算出された法人税額を各社の所得に応じて按分して納付します。新規事業で先行投資中の赤字子会社を抱えるグループなどにとって、有効な節税手段になり得ます。

2. 旧「連結納税制度」との違い ― 個別申告方式へ

2022年3月まで存在した連結納税制度は、グループ全体を一つの法人とみなし、親法人が一括して申告・納税する仕組みでした。子会社の決算に誤りがあると、グループ全体の申告をやり直す必要があり、親法人の事務負担が非常に重いことが長年の課題でした。

この反省から、令和2年度税制改正でグループ通算制度に移行し、損益通算の仕組みは維持しつつ、各法人がそれぞれ個別に申告・納税する方式に改められました。ある法人に後から修正・更正事由が生じても、原則として他の法人の税額計算には影響しない「遮断措置」が採られており、1社の税務調査対応がグループ全体に波及するリスクは大きく軽減されています。

3. 適用対象法人

対象になるのは、親法人と、その親法人による完全支配関係(100%の資本関係)がある内国法人(子法人)です。親法人・子法人のすべての連名で承認申請書を提出し、原則として適用を受けようとする最初の事業年度開始の日の3か月前までに申請する必要があります。なお、いったん承認を受けると、単に税負担が軽くなるという理由だけでは任意にやめることができず、「事務負担が著しく過重になる」など、やむを得ない事情がある場合に国税庁長官の承認を受けて取りやめる仕組みになっています。

4. 見落としやすいデメリット ― 中小法人特例が使えなくなることがある

グループ通算制度を適用すると、グループ内のいずれか1社でも資本金1億円超の法人がある場合、グループ全体が「中小法人」に該当しなくなります。これにより、次のような中小法人向けの優遇措置がグループ全体で使えなくなる可能性があります。

  • 軽減税率15%(VOL.20参照)
  • 交際費の定額控除(年800万円、VOL.04参照)
  • 貸倒引当金の法定繰入率
  • 少額減価償却資産の特例(VOL.05参照)

実務メモ:親法人が資本金1億円以下の中小法人であっても、グループ内の子法人が資本金1億円超であれば、グループ全体が大企業扱いになります。損益通算による節税効果中小法人特例を失うデメリットを比較したうえで、適用を検討する必要があります。

5. 開始前の繰越欠損金は「自己の所得の範囲内」に制限

グループ通算制度に加入する前から法人が持っていた繰越欠損金(VOL.16参照)は、原則としてその法人自身の所得の範囲内でしか使えません(SRLYルール)。「赤字の親法人がグループ通算制度に入れば、子会社の黒字と相殺できる」という単純な話ではなく、開始前の欠損金は自分の黒字としか相殺できない点に注意してください。

6. 実務のポイント

グループ通算制度は、複数の完全子会社を持つ企業グループにとって強力な節税手段になり得ますが、中小法人特例の喪失や、決算スケジュールをグループ全体で足並みを揃える必要があるなど、事務負担の増加も伴います。

グループ会社をお持ちの経営者の方で、制度適用のメリット・デメリットを試算してみたい場合は、お気軽にご相談ください。

※本記事は公開時点の法令等に基づいて作成しています。個別の適用可否については必ずご確認ください。

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