1. 家事按分とは
家賃や電気代のように、プライベートと事業の両方に関わる支出(家事関連費)は、支出全額をそのまま経費にすることはできません。事業に使った部分だけを合理的な基準で切り出して経費にする作業を「家事按分」と呼びます。純粋な生活費(家事費)は経費にできない一方、事業との関連性がある部分は、按分すれば経費として認められます(この考え方は主に個人事業主に適用され、法人は原則として事業用の支出と代表者個人の支出を明確に分ける必要があります)。
2. 賃貸の場合 ― 面積按分と時間按分
最も一般的なのは面積按分です。自宅全体の床面積に対する事業専用スペースの割合を計算し、家賃にその割合を掛けます。
計算例:自宅全体60㎡のうち、仕事専用スペースが15㎡の場合、按分率は15÷60=25%。家賃15万円なら3万7,500円を経費にできます。
ワンルームなど、仕事とプライベートで部屋が明確に分かれていない場合は、時間按分(1日の活動時間のうち仕事に使った時間の割合)で計算する方法もあります。家賃のように性質が固定的な支出は面積按分、電気代のように使用時間で変動する支出は時間按分、というように支出の性質に応じて按分方法を使い分けるのが望ましいとされています。
3. 持ち家の場合 ― 対象になる費用・ならない費用
持ち家を事務所として使う場合、家賃は発生しませんが、次の費用を家事按分して経費にできます。
- 建物の減価償却費(土地部分は減価償却の対象外のため按分できません)
- 固定資産税
- 住宅ローンの利息部分
- 火災保険料
実務メモ:住宅ローンの元本返済部分は経費にできません。あくまで借金の返済であり、費用ではないためです。また、住宅ローン控除(VOL.23参照)を利用している場合、事業で使用する割合が50%を超えると住宅ローン控除自体が受けられなくなるおそれがあるため、按分比率を大きく取りすぎると別の控除を失うリスクがある点に注意が必要です。
4. 開業前から住んでいた持ち家を事務所にする場合
既に所有している持ち家を後から事業用に転用する場合は、事務所として使い始める前の期間について既に価値が減少している分を除いた金額(未償却残高)をもとに、そこから改めて減価償却費を計算します。取得時からの経過期間や取得価額の把握が必要になるため、事業への転用を予定している場合は、取得時の契約書等を保管しておくことが重要です。
5. 税務調査で否認されないための3つのポイント
- 実態と乖離した比率を避ける……実際には1割程度しか業務に使っていないのに、家賃の5割を経費にするような比率は否認されやすい
- 比率を裏付ける記録を残す……間取り図、業務スペースの写真、稼働時間の記録など、按分の根拠を説明できる資料を保管する
- 実態が変わったら比率も見直す……事業規模の拡大・縮小や在宅勤務の頻度変化があったのに、毎年同じ比率を漫然と使い続けると、実態との乖離を指摘されやすい
6. 実務のポイント
家事按分は「絶対にこの比率が正解」という基準があるわけではなく、税務署に説明を求められたときに合理的な説明ができるかが重要です。按分比率を決めた根拠は、メモや間取り図の形で残しておくことをおすすめします。
自宅兼事務所の按分比率や、持ち家の減価償却の計算でご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。