1. 法定調書とは
法定調書は、所得税法・相続税法・租税特別措置法などの法律により、税務署への提出が義務づけられた書類の総称で、現在60種類以上あります。税務署が金銭の流れを把握し、適正な課税が行われているかを確認するための仕組みです。従業員に給与を支払っている、あるいは税理士・デザイナー等の個人に業務委託の報酬を支払っている事業者であれば、基本的に何らかの法定調書の提出義務があると考えておく必要があります。
2. 代表的な法定調書
- 給与所得の源泉徴収票……給与等を支払ったすべての方に交付が必要。税務署への提出は一定額を超える方のみ(例:年間給与支払額が500万円超の一般の方、150万円超の役員など)
- 退職所得の源泉徴収票……退職手当等を支払った方に作成。令和8年1月1日以後支払う退職手当からは、役員だけでなく全従業員分の税務署・市区町村への提出が必要になる
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書……税理士報酬・原稿料・デザイン料など、一定の報酬・料金を個人または法人に支払った場合に作成
- 不動産の使用料・売買あっせん手数料等の支払調書、配当等の支払調書 など
3. 「提出対象外」でも法定調書合計表は必要
見落とされがちなのが、個々の源泉徴収票が税務署への提出対象外(給与額が基準以下等)であっても、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」自体は必ず提出する必要があるという点です。
実務メモ:「うちは全員給与が少ないから源泉徴収票を出す従業員がいない」というケースでも、合計表には給与を支払った全従業員(退職者・アルバイトを含む)の人数と支払金額の合計を記載し、摘要欄に「該当なし」等と記して提出する必要があります。法定調書合計表は、いわば法定調書全体の「表紙」であり、これ自体を出し忘れると無申告扱いになりかねません。
4. 電子提出義務化の基準が「30枚」に引き下げ
法定調書は、種類ごとに前々年に提出した枚数が100枚以上の場合、書面での提出が認められず、e-Tax・光ディスク(CD・DVD等)・認定クラウドサービスのいずれかによる電子提出が義務付けられています。
この基準は、令和9年(2027年)1月以後に提出する法定調書から「30枚以上」に引き下げられる予定です。従業員数が数十人規模の会社は、これまで電子提出義務の対象外だったとしても、新基準では対象になる可能性が高まります。事前にe-Taxの利用者識別番号の取得や、給与計算ソフトの電子提出機能の確認など、準備を進めておく必要があります。
5. 「電子的提出の一元化」で二度手間を防ぐ
給与所得の源泉徴収票は税務署へ、給与支払報告書は市区町村へと、本来は別々の提出先に別々のデータを作成する必要があります。しかし、地方税ポータルシステム(eLTAX)の「電子的提出の一元化」機能を使えば、統一されたCSVレイアウトで両方のデータを同時に作成し、それぞれへ送信できます。給与支払報告書に必要事項を記載して市区町村に提出すれば、税務署への源泉徴収票提出があったものとみなす扱いも設けられており、事務負担の軽減に役立ちます。
6. 実務のポイント
法定調書の作成・提出は、年末調整(VOL.44参照)の作業と密接に関連しており、12月〜1月にかけて業務が集中します。特に令和8年分からは退職者全員分の源泉徴収票提出が必要になるなど、対応範囲が広がる年もあるため、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが大切です。
自社が電子提出義務の対象になるか、法定調書の作成・提出の進め方についてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。