西原公認会計士・税理士事務所

税務コラム VOL.71 / 譲渡所得・不動産

売却時期がたった1日違うだけで、税額が2倍に ― 不動産の短期・長期譲渡所得、「5年」の数え方に潜む誤解

  • 不動産の譲渡所得は、所有期間5年以下なら短期譲渡所得(税率39.63%)、5年超なら長期譲渡所得(税率20.315%)
  • 所有期間の判定は「譲渡した年の1月1日」時点で行う。実際の売買契約日・引渡日ではない
  • この判定基準のため、実際には5年を超えて所有していても短期譲渡所得になることがある
  • 相続・贈与で取得した不動産は、被相続人・贈与者が取得した日から所有期間を通算する

1. 所有期間で税率が「約2倍」変わる

不動産(土地・建物)を売却して得た譲渡所得には、給与所得などとは分離して課税される分離課税が適用され、所有期間の長さによって税率が大きく異なります。

区分

所有期間

税率(所得税+住民税+復興特別所得税)

短期譲渡所得

5年以下

39.63%

長期譲渡所得

5年超

20.315%

同じ譲渡益2,000万円でも、短期譲渡所得なら約792万円、長期譲渡所得なら約406万円と、税額に約2倍の差が生じます。売却のタイミングを見誤ると、想定より数百万円単位で税負担が変わることもある、影響の大きい論点です。

2. 判定基準は「譲渡した年の1月1日」― 最大の誤解ポイント

最も誤解されやすいのが、所有期間の判定基準日です。「取得日から売却日までの実際の経過期間」で判断すると思われがちですが、税務上は「譲渡した年の1月1日時点」でさかのぼって所有期間を数えます

具体例:2019年8月15日に取得した不動産を2024年12月1日に売却した場合、実際の所有期間は8月15日を基準にすれば満5年を超えています。しかし、税務上は売却した年(2024年)の1月1日時点で判定するため、2024年1月1日時点ではまだ5年を超えておらず、短期譲渡所得になってしまいます。長期譲渡所得として扱われるには、2025年1月1日以降に売却する必要があります。

実務的な目安としては、「取得した年に6を足した年の1月1日以降」に売却すれば、確実に長期譲渡所得の要件を満たせます。売却時期を数か月〜1年程度動かせるのであれば、この判定基準を踏まえてタイミングを検討する価値があります。

3. 契約日・引渡日どちらで判断するかにも注意

不動産の売買は、売買契約日と引渡日が1か月前後ずれることが一般的です。取得日・譲渡日をどちらの日付で判断するかによって所有期間の計算が変わり得るため、契約書の日付だけを見て「もう5年経った」と判断するのは危険です。取得時・売却時のいずれも、契約日・引渡日・(新築の場合は)竣工引渡日のどれを基準にするかを正確に確認する必要があります。

4. 相続・贈与で取得した不動産は「前の所有者」の取得日を引き継ぐ

相続や贈与によって取得した不動産を売却する場合、所有期間は相続・贈与を受けた日ではなく、被相続人(亡くなった方)や贈与者が取得した日から通算して計算します。たとえば、親が10年前に取得した不動産を相続し、相続後すぐに売却したとしても、所有期間は10年超として長期譲渡所得になります。「相続したばかりだから短期譲渡になるはず」という誤解は禁物で、実際には有利に働くケースが多い点です。

5. マイホームには追加の軽減措置もある

居住用財産(マイホーム)の売却には、譲渡益から最大3,000万円を控除できる特例があります。さらに、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えるマイホームには、通常の長期譲渡所得よりもさらに低い「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」(課税譲渡所得6,000万円以下の部分は14.21%)が適用できます。この10年判定も、5年判定と同様にその年の1月1日時点で行います。

6. 実務のポイント

不動産の売却を検討している場合、契約や引渡しの日付を1〜2か月動かすだけで税額が大きく変わることがあります。売却の意思決定段階から、取得日・所有期間の確認を最優先で行うことをおすすめします。

不動産の売却時期や税額の試算についてご相談があれば、契約前の早い段階でお気軽にお問い合わせください。

※本記事は公開時点の法令等に基づいて作成しています。個別の適用可否については必ずご確認ください。

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