西原公認会計士・税理士事務所

税務コラム VOL.73 / 消費税・届出書

消費税は「届出書の数」がとにかく多い税目です ― 主要な届出書の使い分けと、共通する「前日まで」の期限ルール

  • 消費税には選択届出書・不適用届出書のペアが多数あり、代表例は課税事業者選択簡易課税制度選択
  • 提出期限は原則「適用を受けたい課税期間の初日の前日まで」。1日でも遅れると翌々期からになる
  • 課税事業者選択・簡易課税ともに、一度選択すると2年間は元に戻せない「縛り」がある
  • インボイス登録だけが目的なら、課税事業者選択届出書は不要な場合が多い(登録申請書のみで足りる)

1. なぜ消費税には届出書が多いのか

消費税は、免税・課税、原則課税・簡易課税、課税期間の長さなど、事業者が自らの状況に応じて選択できる制度が多い税目です。選択制である以上、「選択します」という届出と「選択をやめます」という届出がペアで用意されているため、他の税目に比べて届出書の種類が多くなっています。ここでは、実務で特に登場頻度の高いものを整理します。

2. 免税・課税の選択に関する届出書

届出書

使う場面

消費税課税事業者選択届出書

免税事業者があえて課税事業者になり、設備投資等で消費税の還付を受けたい場合など

消費税課税事業者選択不適用届出書

選択をやめて免税事業者に戻りたい場合(2年縛りあり、高額特定資産取得時は3年縛り)

消費税の新設法人に該当する旨の届出書

資本金1,000万円以上の新設法人が該当する場合(VOL.48参照)

実務メモ:インボイス発行事業者になるためだけなら、原則として「適格請求書発行事業者の登録申請書」のみを提出すれば足り、課税事業者選択届出書を別途出す必要はありません。両方を提出すると、意図せず2年縛り・3年縛りの起点が変わることがあるため、目的(インボイス登録なのか、それ以外の理由で課税事業者になりたいのか)を明確にしてから届出書を選ぶ必要があります。

3. 簡易課税に関する届出書

届出書

使う場面

消費税簡易課税制度選択届出書

みなし仕入率による簡便な計算(簡易課税)を選びたい場合

消費税簡易課税制度選択不適用届出書

簡易課税をやめて原則課税に戻りたい場合(2年縛りあり)

簡易課税制度選択届出書を提出していても、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間は自動的に原則課税に戻ります(VOL.11参照)。届出書自体は失効せず、翌期以降に売上高が5,000万円以下に戻れば、再度簡易課税が適用されます。

4. その他、実務でよく使う届出書

  • 消費税課税事業者届出書……基準期間の課税売上高が1,000万円を超え、課税事業者になったことを事後的に届け出るもの(選択届出書とは異なり、義務的な報告)
  • 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書……課税売上高が1,000万円以下になり、免税事業者に戻る場合の届出
  • 任意の中間申告書を提出する旨の届出書……中間申告義務のない事業者が、あえて任意の中間納付をしたい場合(VOL.46参照)
  • 消費税課税期間特例選択・変更届出書……課税期間を1か月・3か月に短縮したい場合(早期還付等の目的で使われる)

5. 共通する「提出期限」のルール

選択系の届出書の多くは、「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」に提出する必要があります。3月決算の法人が翌期(4月1日開始)から簡易課税を適用したい場合、3月31日までに届出書を提出しなければなりません。

実務メモ:この期限日が土日祝日であっても、翌営業日への延長はされません。1日でも過ぎると、適用開始が1年(1課税期間)先送りになります。ただし、事業を開始した日の属する課税期間については特例があり、その課税期間の末日までに提出すれば、開始した年(期)から適用を受けられます。また、震災等のやむを得ない事情がある場合は、事後的な特例承認申請により提出が間に合わなかった扱いを回避できることもあります。

6. 実務のポイント

消費税の届出書は種類が多く、提出のタイミングを誤ると1年単位で不利な扱いが続くことになりかねません。過去にどの届出書をいつ提出したか、社内・顧問税理士との間で記録を共有しておくことが重要です(e-Taxで提出した場合のメッセージボックスの通知は5年で自動削除される点にも注意してください)。

どの届出書が必要か、提出期限がいつまでかご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

※本記事は公開時点の法令等に基づいて作成しています。個別の適用可否については必ずご確認ください。

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