1. 申告が必要になるライン ― 「年間110万円超」
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた残額に課税されます。1年間の合計が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要です。逆に110万円を超えた場合は、贈与を受けた人(受贈者)が、翌年の2月1日から3月15日までに申告・納税をする必要があります(申告義務があるのは財産をもらった側であり、あげた側ではありません)。
2. 「1人110万円」ではなく「もらった合計額110万円」
見落とされがちなのが、基礎控除110万円は贈与者ごとではなく、受贈者が1年間にもらった合計額に対して1つ適用されるという点です。
具体例:同じ年に父から100万円、母から100万円をもらった場合、それぞれ単独で見れば110万円以下ですが、合計200万円となり、90万円(200万円-110万円)に対して贈与税がかかります。「贈与者が複数いれば、それぞれ110万円まで非課税」という誤解は非常によくあるため、注意が必要です。
3. 「税額ゼロでも申告が必要」な特例
相続税の特例(VOL.29・30参照)と同様、贈与税にも「特例の適用を受けるには申告書の提出自体が要件」となるものが複数あります。代表例は次のとおりです。
- 住宅取得等資金の贈与の非課税特例……省エネ等住宅は1,000万円、一般住宅は500万円まで非課税
- 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例……最大1,000万円(うち結婚資金は300万円まで)
- 夫婦間の居住用不動産の贈与(おしどり贈与)……婚姻期間20年以上の夫婦間で、基礎控除とあわせ最大2,110万円まで非課税
- 相続時精算課税……初めて選択する年は、基礎控除110万円以下であっても「相続時精算課税選択届出書」の提出が必須(VOL.27参照)
これらの特例を使うつもりで「非課税だから申告しなくていい」と放置すると、特例が適用されず、通常の贈与税が満額課税されてしまうことがあります。たとえば1,000万円の住宅取得資金贈与を非課税特例の適用を忘れたまま無申告で放置すると、177万円もの贈与税が生じるケースもあります。
4. 申告不要とされる「生活費・教育費」の注意点
扶養義務者間で、通常必要と認められる生活費・教育費を渡す場合は、金額が110万円を超えていても贈与税の対象外・申告不要です。ただし、これはあくまで「必要な都度、生活費・教育費として使う」ことが前提です。生活費として渡した資金を預金・株式・不動産購入などの資産形成に回した場合は、贈与とみなされ課税対象になります。名目だけ「生活費」としていても、実質的な使途が資産運用であれば特例の対象外になる点に注意してください。
5. 「名義預金」は贈与とすら認められない
祖父母や親が、子・孫の名義の口座を勝手に開設し、本人に知らせないまま入金を続けているケースは、税務上「名義預金」とされ、そもそも贈与そのものが成立していないと判断されることがあります。この場合、110万円の基礎控除を使ったつもりでも贈与税の対象にすらならず、最終的には被相続人(名義を借りた側)の相続財産として扱われ、相続税の課税対象になります。贈与を有効に成立させるには、受贈者本人が口座の存在を認識し、通帳・印鑑を自ら管理し、資金を自由に使える状態にしておくことが欠かせません。
6. 実務のポイント
生前贈与を計画的に進める場合は、①その年の贈与合計額の把握、②特例適用の要否と申告義務の有無、③名義預金にならないための実質的な資金移転、の3点をセットで確認することが重要です。
贈与税の申告要否や、特例の適用可否についてご不明な点があれば、申告期限(翌年3月15日)に余裕を持って、お気軽にご相談ください。