西原公認会計士・税理士事務所

税務コラム VOL.79 / 消費税・外貨建取引

為替差益に消費税はかかりません ― 外貨建取引の円換算、TTM・TTB・TTSの使い分け

  • 外貨建て取引の消費税の課税標準は、法人税・所得税の計算で円換算した金額をそのまま使う
  • 円換算は原則取引日のTTM(仲値)。継続適用を条件に収益・資産はTTB、費用・負債はTTSも選択できる
  • 決算時に生じる為替差損益は、消費税の課税対象にならない(不課税)
  • インボイスに記載する消費税額等の欄だけは、必ず円換算して記載する必要がある

1. 外貨建取引の消費税は「法人税・所得税の換算額」に従う

米ドル建てなど外貨で行った売上・仕入れについて、消費税の課税標準(税率を掛ける基礎となる金額)をいくらにするかは、法人税または所得税の計算で円換算すべきとされている金額によることとされています。つまり、消費税だけの独自の換算ルールがあるわけではなく、法人税・所得税の外貨建取引の換算方法(法人税基本通達13の2章、所得税基本通達57の3章)にそのまま従います。

2. 3つの為替レート ― TTM・TTB・TTS

外貨を円に換算する際に使う為替レートには3種類あります。

  • TTM(仲値)……銀行が基準とする為替レート。原則はこれを使う
  • TTB(電信買相場)……銀行が外貨を買う(顧客が外貨を円に換える)際のレート。TTMより低い
  • TTS(電信売相場)……銀行が外貨を売る(顧客が円を外貨に換える)際のレート。TTMより高い

原則は取引日のTTMで換算しますが、継続適用を条件に、収益・資産についてはTTB、費用・負債についてはTTSを使うことも認められています。日々の細かいレート変動を管理する事務負担を考えると、多くの事業者は自社の取引金融機関のレートを継続的に使う運用をしています。

3. 為替差損益は「消費税の対象外」

決算時に外貨建ての債権・債務が残っている場合、期末レートで再評価することで為替差損益が発生することがあります(法人税では発生時換算法・期末時換算法のいずれかで評価)。この為替差損益は、資産の譲渡等の対価の額にも、課税仕入れに係る支払対価の額にも当たらず、消費税の課税対象外(不課税)として扱われます。為替の変動そのものは「モノやサービスの取引」ではなく、あくまで金融的な価値変動にすぎないためです。決算時の為替差損益を誤って消費税の課税標準に含めてしまわないよう注意してください。

4. インボイスの記載は「円換算」が必須

外貛建てで取引を行う場合でも、発行するインボイス(適格請求書)に記載すべき事項自体は通常の取引と変わりません。ただし、「税率ごとに区分した消費税額等」の欄だけは、必ず円換算した金額で記載する必要があります(それ以外の金額欄は外貨表示のままでも構いません)。この円換算も、取引日のTTMを原則としつつ、継続適用を条件に一定の週・月単位の平均レート等を使うことも認められています。

5. 換算方法は「継続適用」が絶対条件

TTM・TTB・TTSのどれを使うか、また取引日当日のレートを使うか、それとも前月末・前週末など一定期間の平均レートを使うかについては、事業者が合理的な方法を選べます。ただし、いったん選んだ方法は継続して適用することが条件です。

実務メモ:「今期は円安に振れているのでTTBを使い、来期は円高だからTTMに変える」といった恣意的な使い分けは認められません。会計ソフトやERPの初期設定で自動的に適用される換算方法を、期をまたいで変更していないか、決算時に確認しておくとよいでしょう。

6. 実務のポイント

海外との取引が多い事業者は、円換算のルールが法人税と消費税で連動していることを理解し、両者で矛盾のない一貫した処理をしておくことが重要です。

外貨建取引の換算方法の選定や、インボイスの記載方法についてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

※本記事は公開時点の法令等に基づいて作成しています。個別の適用可否については必ずご確認ください。

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