西原公認会計士・税理士事務所

税務コラム VOL.82 / 地方税・事業所税

オフィス移転で、突然かかる税金があります ― 事業所税、対象都市だけに存在する見落としやすい税目

  • 事業所税は、東京23区や政令指定都市など人口30万人以上の一部の都市だけで課税される目的税
  • 床面積に対する「資産割」(免税点1,000㎡超)と、給与総額に対する「従業者割」(免税点100人超)の2種類がある
  • 免税点以下でも床面積800㎡超・従業者数80人超なら申告義務がある点に注意
  • 課税対象外の都市から対象都市へオフィスを移転すると、会社の規模が変わらなくても新たに課税対象になる

1. 事業所税とは ―「一部の都市」だけの税金

事業所税は、大都市の道路・公園などの都市環境整備に充てるための目的税で、地方税法で定められた特定の都市でのみ課税される市町村税です。東京都23区、政令指定都市、人口30万人以上の一部の市など、全国で77団体程度に限られており、すべての市区町村で課税されるわけではありません。法人事業税(都道府県税、所得に応じて課税)とはまったく別の税金で、事業所税は床面積・給与総額という事業規模を基準に課税される点が特徴です。

2. 「資産割」と「従業者割」の2本立て

区分

課税標準

税率

免税点

資産割

事業所床面積

1㎡につき600円

1,000㎡超

従業者割

従業者給与総額

給与総額の0.25%

100人超

資産割・従業者割の免税点判定はそれぞれ独立して行われます。床面積が1,200㎡(1,000㎡超)でも従業者が80人(100人以下)であれば、資産割のみ課税され、従業者割は非課税です。また、免税点を1㎡・1人でも超えると、超えた分だけでなく合計の全体が課税対象になる点にも注意してください(例:1,001㎡なら1,001㎡全体に課税)。

3. 免税点以下でも「申告」が必要なケース

事業所税は税額がゼロでも申告義務が生じることがある税目です。次のいずれかに該当する場合、免税点以下であっても申告書の提出が必要です。

  • 前事業年度に納税義務があった場合
  • 事業年度末日現在で、床面積の合計が800㎡超1,000㎡以下の場合
  • 事業年度末日現在で、従業者数の合計が80人超100人以下の場合

実務メモ:事業所税には申告期限の延長制度がありません。法人税の確定申告は延長できますが、事業所税は必ず事業年度終了後2か月以内に申告しなければならず、無申告のまま放置すると不申告加算金・延滞金の対象になります。法人税の申告スケジュールと切り離して、事業所税の期限を別途管理しておく必要があります。

4. オフィス移転で「思わぬ課税」が生じる

事業所税が課税されない市区町村から、東京23区や政令指定都市などの対象都市へ本社・支店を移転すると、会社の規模や事業内容がまったく変わらなくても、新たに事業所税の課税対象になります。オフィス移転を検討する際は、賃料や立地だけでなく、移転先の都市が事業所税の課税団体かどうかも確認しておくべきポイントです。

5. 従業者数のカウントに注意 ―「パート」の扱いが2通り

従業者割の判定では、免税点の判定(100人超かどうか)にはパート・アルバイトを含めませんが、実際の税額計算(給与総額)にはパート・アルバイトの給与も含めるという、扱いが分かれる点に注意が必要です。また、65歳以上の高齢者・障がい者(いずれも役員を除く)に支払った給与は、従業者割の課税標準から控除できます。出向者については、指揮命令関係等が本社にあれば本社の従業者としてカウントされるなど、細かい判定基準があります。

6. 実務のポイント

事業所税は、都道府県税である法人事業税や、市町村税である固定資産税とは別に発生する独立した税目であり、対象都市に事業所を構える中堅企業の多くが対象になります。事業拡大でオフィスを増床・移転する際は、事業所税の免税点への影響を事前に確認しておくことをおすすめします。

自社が事業所税の課税対象になるか、申告義務があるかの判定についてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

※本記事は公開時点の法令等に基づいて作成しています。個別の適用可否については必ずご確認ください。

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