1. 原則は「出向先が全額負担」
出向は、出向元との雇用関係を維持したまま、出向先の指揮命令のもとで労務を提供する形態です。税務上、労務の提供を受けているのは出向先であるため、出向者の給与は出向先が全額負担するのが原則的な考え方です。実務では、出向元が給与を支払い、その負担額を出向先に請求する「間接支給」の形が一般的ですが、この場合でも実質的には出向先が負担していると扱われます。
2. 出向元が負担すると「寄附金」になり得る
出向先が支払うべき給与の一部または全部を、合理的な理由なく出向元が負担した場合、出向元から出向先への経済的利益の供与とみなされ、出向元に寄附金課税が生じます(出向先では受贈益が生じますが、通常は給与の損金と受贈益の益金が相殺され、実質的な影響は生じません)。
実務メモ:出向元と出向先が100%グループ内の完全支配関係にある場合(親子会社間の出向など)、この寄附金はグループ法人税制(VOL.18参照)の対象になり、出向元では全額損金不算入、出向先では受贈益も全額益金不算入となります。中小企業のグループ会社間出向では該当することが多いため、あらかじめ押さえておくべきポイントです。
3. 「較差補填金」なら合理的な理由として認められる
出向先の給与水準が出向元より低いために、出向者の生活水準を維持する目的で出向元が差額を補填する「較差補填金」は、合理的な理由があるものとして損金算入が認められます。子会社の経営状況が厳しく賞与を支給できない場合に親会社がその分を負担するようなケースも、事情に応じて合理性が認められることがあります。一方、明確な理由なく出向元が給与を多めに負担している場合や、親会社の一方的な都合による支給額変更の場合は、寄附金と判定されるリスクが高まります。出向契約書や覚書に、給与負担の考え方・算定根拠を明記しておくことが、税務調査での説明において重要になります。
4. 消費税は「金額にかかわらず不課税」
出向者に対する給与負担金は、出向元・出向先のどちらが支払っても、雇用契約に基づく給与としての性質を持つため、消費税は不課税として扱われます。これは、出向元が全額支払って一部を出向先へ請求する場合も、逆に出向先が全額支払って一部を出向元へ請求する場合も同様です。「人材派遣」とはまったく異なる扱いである点に注意してください。人材派遣は、派遣会社と派遣先の間に雇用関係がなく、派遣会社が提供する役務の対価とみなされるため、消費税の課税対象(課税売上・課税仕入れ)になります。出向契約か人材派遣契約か、契約内容を正確に見極める必要があります。
5. 出向先で「役員」になる場合は要注意
出向者が出向先で役員に就任する場合、出向先が支払う給与負担金は役員給与として扱われます。この場合、次の要件をいずれも満たすことで、出向先での損金算入が認められます。
- その給与負担金について、出向先の株主総会等の決議がされていること
- 出向契約等において出向期間・給与負担金の額があらかじめ定められていること
これらの要件を満たしていても、定期同額給与(VOL.03参照)のルールに沿って支給しないと、増額改定分などが損金不算入になり得ます。親会社の都合で期中に給与負担金を変更するようなケースは、特に慎重な検討が必要です。
6. 実務のポイント
グループ会社間での出向を行う際は、出向契約書に給与負担のルール(誰が負担するか、較差補填の有無とその理由、金額の算定根拠)を明記しておくことが、税務上のリスクを避ける第一歩です。
出向者の給与負担の設計や、既存の出向契約の内容確認についてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。