1. 使途秘匿金とは何か
使途秘匿金は、法人が行った金銭の支出(贈与・供与など金銭以外の資産の引渡しを含む)のうち、相当の理由がなく、相手方の氏名・名称、住所・所在地、支出の理由を帳簿書類に記載していないものを指します。談合金や賄賂など、相手方を明かせない性質の不透明な支出を想定した規定で、平成6年度に導入されました。当初は時限的な措置でしたが、平成26年度改正で恒久的な制度になっています。
2. 通常の法人税に「40%」が上乗せされる
使途秘匿金と認定されると、次の二重の負担が生じます。
- 支出額が全額損金不算入となり、通常の法人税率で課税される
- それに加え、支出額の40%に相当する金額が、通常の法人税額に上乗せされる
計算例:課税所得1,000万円(法人税率25%と仮定)の会社に、使途秘匿金200万円があることが判明した場合、まず200万円が損金不算入となり課税所得が増えるため法人税が50万円増加(200万円×25%)、さらに使途秘匿金による加算として200万円×40%=80万円が別枠で上乗せされます。地方税への影響もあわせると、使途秘匿金の額とほぼ同額が税金として消えるという非常に重い結果になります。
3. 「赤字だから関係ない」は通用しない
この40%加算は、通常の法人税額とは別枠の特別な課税であるため、その事業年度が赤字で通常の法人税額がゼロであっても、使途秘匿金がある限り必ず課税されます。「今期は赤字だから、多少不透明な支出があっても税金には影響しないだろう」という考えは通用しません。この点が、使途秘匿金課税が特に恐れられる理由の一つです。
4. 「相当の理由」があれば除外される
帳簿に相手方の氏名等が記載されていないからといって、すべてが使途秘匿金になるわけではありません。次のような「相当の理由」がある場合は除外されます。
- カレンダー・手帳などの広告宣伝用物品を不特定多数に配布する場合(一人ひとりの氏名を記録しないのが通例)
- チップ等の小口の謝礼で、相手の氏名まで記載しないことが一般的な場合
- 資産の譲受けその他の取引の対価として相当であることが明らかな支出
一方、単に「税務署にバレたら困るから記載しない」という理由は、まさにこの制度が想定している対象そのものであり、相当の理由には該当しません。
5. 判定は「事業年度末日」、後から書き足しても手遅れ
記載の有無は、原則として事業年度終了の日の時点で判定されます(ただし、法定申告期限までに記載すれば、期末時点で記載があったものとみなされる救済措置があります)。「税務調査で聞かれたらその時に教えればいい」という対応は認められません。申告期限を過ぎてから帳簿に書き足しても手遅れであり、また、ダミーの支払先を記載して実際には別の相手に支払っていたようなケースは、「記載していないもの」として扱われ、さらに重加算税や刑事罰の対象にもなり得ます。
6. 実務のポイント
「使途不明金」(法人税基本通達に基づく損金不算入。40%加算はない)と「使途秘匿金」(租税特別措置法に基づき40%加算がある)は混同されがちですが、税負担への影響がまったく異なります。取引先への謝礼・紹介料・コンサルティング料などを支払う際は、相手方の氏名・住所・支出理由を必ず帳簿・契約書・領収書に記録しておくことが、最も基本的で確実な予防策です。
記録が不十分な支出に心当たりがある場合は、申告期限を迎える前に、記録の整備についてお気軽にご相談ください。