1. 解散から清算結了までの3つの事業年度
会社を解散・清算する際は、次の3つの期間に区切って、それぞれ別個の事業年度(みなし事業年度)として確定申告を行います。
- ①解散事業年度……事業年度開始の日から解散の日まで。申告期限は解散の日の翌日から2か月以内(延長の特例あり)
- ②清算事業年度……解散の日の翌日から1年ごとに区切った期間。残余財産の確定まで1年以上かかる場合、複数回発生する。申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内(延長の特例あり)
- ③残余財産確定事業年度……清算事業年度開始の日から残余財産確定の日まで。申告期限は確定の日の翌日から1か月以内(延長の特例なし)
解散から清算結了までには、最低でも2回(解散事業年度・残余財産確定事業年度)、残余財産の確定に時間がかかる場合はそれ以上の申告が必要になります。各事業年度は12か月未満になることが多く、減価償却費・交際費の定額控除・寄附金の損金算入限度額など、月割計算での調整が必要な項目がある点にも注意してください。
2. 通常の所得計算がベース ―「清算所得課税」は既に廃止
かつては、解散した会社には通常の法人税とは異なる「清算所得課税」という特別な課税方式が適用されていましたが、平成22年度税制改正でこの方式は廃止され、解散後も通常の事業年度と同じ「益金-損金」の所得計算に一本化されています。この変更により、残余財産がないにもかかわらず、債務免除等によって思わぬ所得(債務免除益)が発生し、課税されてしまうケースが生じるようになりました。この問題に対応するために設けられたのが、次に説明する「期限切れ欠損金の損金算入」の制度です。
3. 最後の切り札 ―「期限切れ欠損金」の損金算入
通常、繰越欠損金は発生から一定期間(10年)を過ぎると使えなくなります(VOL.16参照)。しかし、清算中の事業年度において「残余財産がないと見込まれるとき」は、青色欠損金等の控除後の所得を限度に、この期限切れの欠損金まで損金算入できる特例があります。
実務メモ:「残余財産がないと見込まれるとき」とは、その事業年度終了時点で会社が債務超過の状態にあることを指します。この判定は実態貸借対照表(資産・負債を時価ベースで評価し直した貸借対照表)で行う必要があり、帳簿上の数字ではなく、実際に処分した場合の価額で評価し直す必要があります。適用を受けるには、この実態貸借対照表を申告書に添付することが必須です。
4. 株主への残余財産分配 ―「みなし配当」と「譲渡」の区分
清算の最終段階で、残った財産(残余財産)を株主に分配する際は、VOL.81で扱った自己株式の取得と同様の考え方が適用されます。分配額のうち、会社の資本金等の額に相当する部分は「譲渡対価」、それを超える部分は「みなし配当」として扱われます。個人株主が受け取るみなし配当は総合課税(VOL.81参照)となり、会社側(清算法人)には源泉徴収義務、株主への支払通知書の交付義務、税務署への支払調書の提出義務が生じます。法人株主の場合、みなし配当部分は受取配当等の益金不算入の対象になり得ます。
5. 100%子会社の解散は「欠損金の引継ぎ」に注意
完全支配関係(100%)がある子会社を解散させる場合、その子会社が残していた未処理の繰越欠損金(一定期間内に生じたもの)を、親会社が引き継げる特例があります。ただし、残余財産確定日時点で完全支配関係が失われていると引き継げず、また支配関係の継続期間(原則5年)などの要件も細かく定められています。グループ会社の整理・統合を検討する際は、この欠損金の引継ぎ可否も重要な判断材料になります。
6. 実務のポイント
会社の解散・清算は、事業年度の区切りごとに申告期限が異なり、特に残余財産確定事業年度は延長ができない1か月という短い期限のため、スケジュール管理が重要です。債務超過の状態での解散を検討している場合は、期限切れ欠損金の活用可否について、早い段階で試算しておくことをおすすめします。
会社の解散・清算をご検討の場合は、税務申告のスケジュールや欠損金の取り扱いについて、早めにご相談ください。