1. なぜ「無利息」が問題になるのか
法人が金銭を貸し付ける場合、営利法人である以上、通常は相応の利息を受け取ることが前提とされます。グループ会社間で無利息・低利の貸付けを行うと、本来受け取れたはずの利息相当額を、貸し手側が無償で相手に与えた(経済的利益の供与)とみなされ、税務上は寄附金として扱われるのが原則です(VOL.80で扱った交際費と寄附金の区分にも通じる考え方です)。寄附金に認定されると、損金算入限度額を超える部分が損金不算入となり、貸し手側の法人税負担が増加します。
2. 「相当な理由」があれば寄附金に該当しない
法人税基本通達9-4-2は、法人がその子会社等に無利息・低利で貸付けを行った場合でも、「業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので、合理的な再建計画に基づくもの」など相当な理由があれば、その経済的利益は寄附金に該当しないとしています。「子会社等」の範囲は、資本関係だけでなく、取引関係・人的関係・資金関係など事業上のつながりがある相手先まで広く含まれます。
実務メモ:「合理的な再建計画」がまだ最終的に固まっていなくても、再建計画の骨子が明らかで、緊急に融資を行う必要がある「つなぎ融資」であれば、相当な理由があると認められる場合があります。取引先の倒産により資金繰りが急激に悪化した子会社へ、正式な再建計画の策定を待たずに緊急融資を行うようなケースが典型例です。
3. 「合理的な再建計画」と判断される要素
再建計画が合理的かどうかは、次のような要素を総合的に勘案して判断されます。①損失負担等を行う支援者の範囲が適切か、②支援額(無利息化による利益供与額)が合理的か、③再建管理(支援後の経営状況のモニタリング)が行われているか、④利害の対立する複数の支援者(取引金融機関等)の合意により策定されているか、など。複数の利害関係者が合意した再建計画は、原則として合理的なものと扱われやすい傾向があります。
4. 完全支配関係があると「全額損金不算入」のリスクがさらに重くなる
相当な理由がなく寄附金と認定された場合、通常はVOL.80で解説した限度額の範囲内でしか損金算入できません。しかし、100%の完全支配関係にあるグループ内の法人間の寄附金は、グループ法人税制(VOL.18参照)により全額が損金不算入となります(受け手側の受贈益も全額益金不算入)。相当の理由がないまま安易に無利息貸付を行うと、限度額以内の一部損金算入すら認められず、影響がより大きくなる点に注意してください。
5. 「合理的な利率」の考え方
寄附金認定を避けるため、あえて低利ではあるものの一定の利息を設定するケースもあります。この場合の合理的な利率は、貸し手である法人が金融機関から実際に借り入れている資金の平均調達金利を基準にするのが一般的です。自己資金からの貸付けで、外部からの借入がない場合は、租税特別措置法上の利子税特例基準割合など、公的な基準利率を参考にする方法もあります。裁判例では、当時の定期預金の利率(年6%)を基準に利息相当額を算定した事例(清水惣事件)もあり、当時の市場実勢に応じた合理的な水準が求められます。
6. 実務のポイント
グループ会社への無利息・低利貸付を検討する際は、単に「グループ会社だから」という理由だけで実行せず、①子会社の経営状況の悪化の程度、②再建計画の内容と合理性、③支援の緊急性、を書面で整理し、後日の税務調査で説明できる状態にしておくことが重要です。
グループ会社への資金支援を検討されている場合は、実行前に寄附金認定リスクの有無をご相談ください。