1. フリーランス新法とは
正式名称「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」は、令和6年(2024年)11月1日に施行された法律で、個人として業務委託を受けるフリーランス(法律上は「特定受託事業者」)と、業務を発注する事業者との取引を適正化することを目的としています。近年増加するフリーランスが、発注者との取引で弱い立場に置かれやすい実情を踏まえ、①取引条件の明示、②報酬支払の適正化、③ハラスメント対策等の就業環境整備、を発注事業者に義務付けています。
2. 「下請法」との決定的な違い ― 資本金要件がない
中小企業を保護する法律として以前から「下請法」(旧・下請代金支払遅延等防止法。令和8年1月からは「取適法」に改正)がありますが、これは資本金1,000万円超の法人にのみ規制が適用されます。これに対しフリーランス新法は、資本金の額にかかわらず、従業員を使用する事業者であれば個人事業主でも対象になります。「うちは小さい会社(個人事業)だから下請法は関係ない」と考えていた事業者も、フリーランスへ外注する以上、フリーランス新法の対象になり得る点に注意してください。なお、従業員がいない一人社長・一人事業主同士の取引は対象外です。
3. 義務①「取引条件の明示」
フリーランスに業務委託をした場合、書面または電磁的方法(メール等)により直ちに、業務内容・報酬額・支払期日・委託した日・給付を受領する日・受領場所などの取引条件を明示する義務があります。金額や納期の一部がその時点で決まっていない場合も、正当な理由があれば一旦省略でき、決まり次第すぐに追加で明示すれば問題ありません。フリーランスから書面での交付を求められた場合は、原則として応じる必要があります。
4. 義務②「報酬支払は60日以内」
発注事業者は、フリーランスから給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定め、その期日までに報酬を支払わなければなりません。
実務メモ:「月末締め翌々月末払い」のような一般的な支払サイトを採用している会社は、この60日ルールに抵触しやすいため注意が必要です。たとえば毎月末締めの場合、月初に受領した分の支払いも60日以内に収める必要があるため、「翌月末払い」までしか設定できません。仮に契約で60日を超える支払期日を定めても、自動的に60日を経過した日が支払期日とみなされます。既存の取引先との支払いサイトが60日を超えていないか、あらためて確認する必要があります。
5. 1か月以上の継続的委託では「7つの禁止行為」
1か月以上にわたる業務委託を行う場合、発注事業者には次のような行為が禁止されます。
- フリーランスに責任がないのに給付の受領を拒否すること
- フリーランスに責任がないのに報酬を減額すること
- フリーランスに責任がないのに返品を行うこと
- 通常相場に比べ著しく低い報酬を不当に定めること
- 正当な理由なく自社が指定する物品・役務の購入・利用を強制すること など
6か月以上の業務委託については、育児・介護等との両立に関するフリーランスからの申出への配慮義務、ハラスメント対策の体制整備義務もあわせて課されます。
6. 実務のポイント
フリーランスへ継続的に業務を委託している事業者は、①業務委託契約書・発注書のフォーマットが必要な明示事項を網羅しているか、②支払サイトが60日以内に収まっているか、③禁止行為に該当する運用がないか、の3点を確認しておくことをおすすめします。違反が疑われる場合、フリーランスは公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に申出をすることができます。
当事務所では法令遵守そのものの助言は行っておりませんが、外注費の会計処理や支払管理体制の整備についてはご相談いただけます。契約内容の適法性については弁護士等の専門家にもあわせてご確認ください。