1. 目的は同じ、「誰が行うか」が違う
年末調整と確定申告は、どちらも1年間の所得に対する正しい所得税額を確定させ、源泉徴収された税額との過不足を精算するという目的では共通しています。決定的な違いは手続きの主体です。年末調整は勤務先(会社)が従業員に代わって行う手続きで、確定申告は納税者本人が税務署に対して行う手続きです。毎月の給与から天引きされる源泉徴収税額はあくまで概算のため、年末に1年間分の所得・控除を確定させて差額を精算する必要があり、それを会社が代行するのが年末調整です。
2. 年末調整では対応できない3つの控除
会社員であっても、次の控除を受けたい場合は年末調整とは別に、自分で確定申告をする必要があります。
- 医療費控除……1年間の医療費が10万円(所得200万円未満は所得の5%)を超えた場合(VOL.25参照)
- 雑損控除……災害・盗難・横領によって資産に損害を受けた場合
- 寄附金控除……ふるさと納税等を行った場合。ワンストップ特例(VOL.24参照)を使えば確定申告なしで済むが、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合はワンストップ特例が無効になり、寄附金控除もあわせて申告し直す必要がある
3. 住宅ローン控除は「初年度だけ」確定申告が必要
住宅ローン控除(VOL.23参照)は、税務署による内容確認のため、控除を初めて受ける年は必ず確定申告が必要です。2年目以降は、税務署から送付される証明書を年末調整の際に会社へ提出すれば、年末調整だけで控除を受けられます。「住宅ローン控除は年末調整で完結する」というイメージを持たれがちですが、正確には初年度は例外という点を押さえておく必要があります。
4. 副業・複数の勤務先がある場合
年末調整は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した1社でしか行えません。次のようなケースは、年末調整を受けていても確定申告が必要です。
- 複数の勤務先から給与を受け取っており、年末調整を受けていない方の給与収入がある場合
- 副業の所得(事業所得・雑所得・不動産所得等)が年間20万円を超える場合(VOL.42参照)
- 給与収入が2,000万円を超える場合(そもそも年末調整の対象外)
- 副業でインボイス登録をしており、所得税の確定申告が不要な規模であっても消費税の申告が必要になる場合
実務メモ:副業所得が20万円以下で確定申告が不要な場合でも、副業の報酬から所得税が源泉徴収されている場合は、確定申告をすることで源泉徴収された税金の還付を受けられることがあります。金額が小さくても、申告した方が得になるケースは意外と少なくありません。
5. 年の途中で転職した場合
年の途中で転職した場合、原則として転職先の会社が、前職分もあわせて年末調整を行います。前職を退職した際に発行される源泉徴収票を転職先に提出することで、前職・転職先の給与を合算して精算されます。ただし、前職の源泉徴収票が転職先の年末調整の締め切りに間に合わない場合は、年末調整では対応できず、本人が確定申告で精算する必要があります。
6. 実務のポイント
「年末調整を受けたから確定申告は不要」と思い込んでいると、医療費控除やふるさと納税の申告漏れ、副業所得の申告漏れにつながることがあります。ご自身が確定申告も必要なケースに当てはまっていないか、年末調整の書類を提出する際にあわせて確認しておくと安心です。
年末調整と確定申告の両方が必要かどうかの判断や、確定申告の進め方でご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。