1. 銀行は決算書の「どこ」を見ているか
融資審査で金融機関が最も重視する提出書類は決算書です。銀行の視点は一貫していて、「貸したお金は確実に返ってくるか」という一点に集約されます。この観点から重視される代表的な指標が、自己資本比率(会社の体力)、債務償還年数(返済能力)、純資産の額(債務超過の有無)の3つです。
2. 自己資本比率 ― 会社の「体力」
総資産のうち、返済不要の自己資本(純資産)がどれだけの割合を占めるかを示す指標です。
自己資本比率(%)= 純資産 ÷ 総資産 × 100
業種によって水準は異なりますが(製造業・建設業は20〜30%程度、情報通信業では40%を超える企業も珍しくありません)、一般的に20〜30%以上が一つの目安とされます。比率が高いほど、負債への依存度が低く財務が安定していると評価されます。この指標は短期間で改善するのが難しく、日々利益を積み上げて内部留保(利益剰余金)を厚くしていくことが王道の改善策です。
3. 債務償還年数 ― 「何年で返せるか」
現在の借入金を、会社が生み出すキャッシュで何年かけて返済できるかを示す指標です。
債務償還年数(年)= 借入金残高 ÷(経常利益 + 減価償却費 - 法人税等)
減価償却費は実際に現金が流出しない費用のため、返済に充てられる原資として利益に足し戻します。目安は業種により幅がありますが、おおむね10年以内が良好、10〜15年は要注意、15年を超えると新規融資が難しくなるとされています。改善するには、経常利益を高めるか、借入金そのものを圧縮するしかありません。
4. 「節税」と「銀行評価」のジレンマ
ここで多くの中小企業経営者が直面するのが、節税と銀行からの評価は時にトレードオフの関係にあるという点です。役員報酬を上げる、経費計上を積極的に行うといった節税策は、法人税の負担を減らす一方で経常利益・純資産を圧縮し、自己資本比率や債務償還年数を悪化させます。
実務メモ:近い将来に融資を受ける予定がある場合は、決算対策の前に「今回の節税策が、自己資本比率・債務償還年数にどう影響するか」を試算しておくべきです。目先の税負担を減らすことと、金融機関からの評価を確保することのバランスを取る視点が欠かせません。
5. 「異常な増減」への説明準備
金融機関は、直近数期分の決算書を並べて売上に比例しない売掛金・棚卸資産の急増など、不自然な勘定科目の変動をチェックします。取引先の業績悪化による売掛金の滞留、過剰在庫の抱え込みなどが疑われるためです。こうした変動には、事前に理由を整理し、いつでも説明できる状態にしておくことが望まれます。融資担当者との面談では、業績が良くても悪くても積極的な情報開示の姿勢そのものが評価される、という点も知っておくとよいでしょう。
6. 実務のポイント
自社の自己資本比率・債務償還年数を定期的に把握しておくことは、融資審査の場面だけでなく、経営の健全性を測る指標としても役立ちます。
融資を見据えた決算対策や、現状の財務指標の確認については、決算の数か月前を目安に一度ご相談いただくことをおすすめします。