1. 役員貸付金は「意図せず」発生することが多い
役員貸付金というと、経営者が会社から意図的にお金を借りている状況をイメージしがちですが、実際には次のような気づかないうちに積み上がるケースが少なくありません。
- 役員が会社の経費を立て替えたが、領収書を紛失し経費計上できず、精算されないまま貸付金扱いになった
- 会社の売上が誤って役員個人の口座に入金され、そのままになっている
- 決算時、使途不明な出金を「仮払金」として処理し続けた結果、長期化して貸付金と同様に扱われる
- 役員が私的に使ったお金を、そのまま帳簿上「貸付金」として処理した
2. 無利息・低利息のままだと「認定利息」が課税される
法人は利益を追求する主体であるため、役員への貸付金にも本来は適正な利息を受け取る必要があります。会社が金融機関から借り入れた資金を役員に貸し付けている場合はその借入利率、それ以外の場合は国税庁が定める利率(令和4年〜7年中の貸付けは年0.9%)で利息を計算し、実際に受け取った利息との差額が役員への給与として課税されます。
実務メモ:この給与認定は役員報酬の追加支給とみなされるため、法人側では過大役員報酬として損金不算入になり得るほか、源泉徴収漏れとして追徴されるリスクもあります。差額が年5,000円以下であれば給与課税されない例外もありますが、貸付金額が大きければすぐにこの範囲を超えてしまいます。
3. 金融機関の評価への影響が最大のデメリット
税務上のルールを守って利息計算をしていても、決算書に「役員貸付金」という科目があるだけで、金融機関からの評価は大きく下がります。役員への貸付は返済期限が曖昧で回収の実効性に乏しいことが多いため、金融機関は融資審査の際、役員貸付金を実質的な資産として認めず、自己資本から差し引いて評価する傾向があります(VOL.40で解説した自己資本比率の考え方にも直結します)。結果として、実際の決算書の数字以上に財務内容が悪く見え、融資限度額の縮小や審査落ちにつながることがあります。また「会社と個人のお金の区別ができていない」という経営管理面の不信感にもつながりやすい項目です。
4. 解消方法とそれぞれの注意点
- 役員報酬からの計画的な返済……最も基本的で税務リスクの少ない方法。返済計画を明文化し、実際に継続して返済する実績を残すことが重要
- 金銭消費貸借契約書の整備……返済期限・利率を明記した契約書がないと、貸付金であることの主張自体が難しくなる
- 役員個人の資産売却による返済……不動産や有価証券の売却資金を充てる方法。譲渡所得税など別の税負担が生じる点に注意
- 債務免除・DES(デット・エクイティ・スワップ)……貸付金を放棄・出資転換する方法もあるが、役員側で経済的利益として課税される可能性があるなど、慎重な検討が必要
「今期だけ賞与として処理して帳消しにしよう」といった安易な解消は、多額の賞与課税(源泉所得税・社会保険料の負担増)を招くため、単純な解決策にはなりません。
5. 発生させないための予防策
最も重要なのは、そもそも役員貸付金を発生させない経理体制です。役員個人の支出と会社の経費を明確に分け、領収書の管理を徹底し、法人口座と個人口座を混同しないルールを徹底することが基本になります。使途不明な出金があれば、仮払金のまま放置せず、その都度精算する習慣をつけることが、長期化・多額化を防ぐ第一歩です。
6. 実務のポイント
既に役員貸付金が発生している場合は、放置せず早めに解消の道筋を立てることが、税務・融資の両面でメリットになります。
役員貸付金の残高や解消方法についてお悩みの場合は、資金繰りや融資への影響もあわせてご相談ください。