1. 原則は「数年に分けて経費化」、例外が少額特例
パソコン、複合機、応接セット、業務用ソフト——こうした固定資産は、原則として買った年に全額経費にはできず、耐用年数にわたって減価償却していきます(パソコンなら4年など)。
ただし金額が小さい資産まで律儀に数年かけて償却するのは事務負担が大きいため、取得価額に応じて「即時または短期間で経費化できる」例外が3段階で用意されています。なお、判定の起点は「購入日」ではなく「事業の用に供した日(使い始めた日)」である点も押さえておきましょう。
2. 3つの区分早見表(2026年4月以後取得分)
取得価額 | 処理方法 | 対象・上限 |
|---|---|---|
10万円未満 | 消耗品費等として全額即時経費 | すべての法人・個人 |
20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等償却(月割なし) | すべての法人・個人 |
40万円未満 | 中小企業者等の特例で全額即時償却(青色申告が要件) | 資本金1億円以下・従業員400人以下等 |
近年は業務用パソコンが30万円を超えることも珍しくなく、「あと数万円で特例が使えない」というケースが頻発していました。今回の40万円への引き上げは、物価上昇を踏まえた実務に嬉しい改正です。
3. 令和8年度改正の3つのポイント
① 上限が「30万円未満→40万円未満」に
2026年(令和8年)4月1日以後に取得した資産から適用されます。適用は事業年度単位ではなく資産ごとの取得日で判定されるため、2026年3月以前に取得した33万円のパソコンは対象外、4月以後に取得した同じパソコンは対象、という違いが生じます。
② 適用期限が令和11年3月31日まで3年延長
期限切れ目前だった制度が延長され、当面は安心して設備投資計画に織り込めます。
③ 対象法人が「従業員400人以下」に縮小
従来の「常時使用する従業員500人以下」から400人以下に引き下げられました。大半の中小企業には影響しませんが、該当規模の会社は要注意です。資本金1億円以下・青色申告という基本要件は従来どおりです。
4. 実務の注意点 3つ
注意① 2026年は「基準の混在」が起きる
たとえば12月決算法人なら、2026年1〜3月取得分は30万円基準、4月以降取得分は40万円基準です。固定資産台帳で取得日と使用開始日を正確に記録しておかないと、決算・申告時に判定を誤ります。
注意② 判定金額は経理方式で変わる
税込経理なら税込金額、税抜経理なら税抜金額で40万円未満かを判定します。税抜経理の会社なら税込44万円弱のパソコンまで対象になり得ます。また判定は1台・1組ごと。応接セットのように「机+椅子」で1組として機能するものは合計額で判定します。
注意③ 償却資産税(固定資産税)は別問題
意外と見落とされるのがここです。この特例で即時償却した資産は、市区町村の償却資産税の申告対象に含まれます。一方、20万円未満の資産を「一括償却資産(3年償却)」で処理した場合は償却資産税の対象外です。償却資産の課税標準が150万円以上ある会社では、20万円未満の資産をあえて一括償却資産にする方がトータルで有利なこともあり、単純に「即時償却=正解」ではありません。
5. 申告手続き ― 明細書の添付を忘れずに
この特例の適用を受けるには、確定申告書に別表16(7)「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」を添付し、対象資産の明細を記載する必要があります。帳簿上は「消耗品費」などで処理していても、明細書の添付がなければ適用できません。
実務メモ:freee会計なら、固定資産台帳に登録する際に償却方法で「少額償却」を選択すれば、即時償却の仕訳と申告書類への連携が整理しやすくなります。10万円以上の資産を消耗品費で直接登録して台帳から漏れる、が最も多いミスです。
6. 実務のポイント
40万円への引き上げで、パソコン・什器・ソフトウェアなど日常的な設備投資のほとんどが即時償却の射程に入りました。ただし年間300万円の上限があるため、大きめの設備投資を予定している年は「どの資産に特例を使うか」の選択が節税効果を左右します。原則として耐用年数の長い資産に優先的に使うのが定石です。
また、利益が出ていない年に無理に即時償却すると、単に赤字を深くするだけで節税メリットを取り逃すこともあります。即時償却・一括償却・通常償却のどれが自社に合うか迷う場合は、設備投資の前に一度ご相談ください。