1. 「法定償却方法」という考え方

届出をしない場合の償却方法は、法人と個人で逆
法人機械・車両・工具器具備品など原則は定率法
個人事業主同じ資産でも法定償却方法が異なる原則は定額法

減価償却資産は、資産の種類ごとに定額法(毎年同じ額を償却)と定率法(期首の未償却残高に一定率を掛けて償却、初年度ほど償却額が大きい)のいずれかを選べます。ただし、何も届け出なければ、法人は「定率法」が自動的に適用されます(個人事業主は逆に「定額法」が自動適用)。この、届出がない場合に適用される方法を「法定償却方法」と呼びます。

2. 資産の種類によっては選べない

資産の種類を確認してから、方法と届出期限を決める
選択できない資産建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアなど定額法のみ
選択できる資産機械・車両・工具器具備品など定額法を選ぶなら届出

新設法人が定額法を選ぶ場合は、設立第1期の確定申告書の提出期限までに届出が必要です。

資産の種類

選べる方法

建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェア

定額法のみ(選択の余地なし)

機械装置・車両運搬具・工具器具備品など

届出により定額法・定率法を選択可(届出なしなら定率法)

つまり実務上の判断が必要になるのは、機械・車両・工具器具備品などの有形固定資産(建物系を除く)に限られます。

3. 定額法と定率法、どちらが向いているか

定率法は初年度の償却額が大きく、早期に節税効果を得たい黒字企業に向いています。定額法は毎年同額のため、費用の予測がしやすく、決算数値を安定させたい場合や、設備投資直後は赤字だが将来の黒字化を見込んでいる場合(欠損金の使用タイミングを調整したい場合など)に向いています。

実務メモ:「法人は定率法が原則だから、そのままでよい」と考えがちですが、金融機関からの評価という観点では、定額法の方が決算書の見た目(利益の安定性)が良くなることがあります。融資審査を重視する会社は、あえて定額法を届け出るケースもあります。

4. 届出の期限 ― 新設法人は「設立1期目の申告期限」まで

定額法を選びたい場合は、「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出する必要があります。提出期限は次のとおりです。

  • 新たに法人を設立した場合……設立第1期の確定申告書の提出期限まで
  • 新たな種類の減価償却資産を取得した場合……その事業年度の確定申告書の提出期限まで
  • 既存の方法から変更したい場合……変更後の「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を、変更したい事業年度開始前日までに提出し、税務署長の承認を得る必要がある(前回の変更から3年未満だと原則却下されるため注意)

新設法人の場合、この期限を過ぎると設立1期目の減価償却方法の選択ができず、自動的に定率法が確定します。設立直後は他の手続きに追われて見落としがちなので、法人設立時のチェックリストに必ず入れておくべき項目です。

5. 実務のポイント

減価償却方法の選択は、一度決めると簡単には変更できない(変更には承認申請と3年縛りがある)ため、法人設立時や大きな設備投資の前に、事業計画・資金計画とあわせて検討することが重要です。

既に定率法で運用している会社でも、大型の設備投資を控えている場合は定額法への変更が有利になることがあります。法人設立や設備投資を検討中の方は、一度確認してみてください。