1. 「法定償却方法」とは ― 届出なしなら定率法
減価償却の方法には、毎期一定額を償却する定額法と、期首の未償却残高に一定率を掛けて償却する定率法があります(一部の資産にはリース期間定額法・生産高比例法もあります)。法人の場合、資産の種類ごとに定められた「法定償却方法」は原則として定率法です。特に届出をしていなければ、自動的にこの法定償却方法(定率法)が適用されます。個人事業主の法定償却方法は逆に定額法であり、法人と個人で原則が異なる点は覚えておくとよいでしょう。
2. 定額法と定率法、それぞれの特徴
方法 | 特徴 |
|---|---|
定額法 | 毎期同額を償却。計算がシンプルで将来の費用を予測しやすい。初年度の利益を大きく圧縮したくない場合に向く |
定率法 | 取得初期の償却費が大きく、年を追うごとに減少していく。早期に費用化したい、利益が出ている会社の節税に向く |
どちらを選んでも、耐用年数を通じて償却できる総額(取得価額-備忘価額1円)は同じです。あくまで「いつ、どれだけのペースで費用化するか」という時期の違いであり、税負担を軽減する制度ではなく、資金繰りや利益計画に応じた選択の問題である点を理解しておく必要があります。
3. 建物・附属設備・構築物・ソフトウェアは「選べない」
機械装置・車両運搬具・工具器具備品などは、届出により定率法から定額法に変更できます。しかし、建物(平成10年4月以後取得分)・建物附属設備及び構築物(平成28年4月以後取得分)・ソフトウェアは、定額法のみが認められており、そもそも定率法を選ぶ余地がありません。「建物の減価償却方法を定率法に変更したい」という相談を受けることがありますが、これは制度上不可能である点を最初に確認しておく必要があります。
4. 変更する際の届出期限 ― 「事業年度開始の前日」
法定償却方法(定率法)から別の方法(定額法)に変更したい場合は、「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を、変更しようとする事業年度開始の日の前日までに提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。3月決算の法人であれば、翌期(4月1日)から変更したい場合、その年の3月31日までに申請する必要があります。
実務メモ:この期限を確定申告の提出期限(決算日から2か月後)と混同しないよう注意してください。申請書の提出期限は決算日より前、つまり当期が終わる前です。「今期の申告書を出すときに一緒に手続きすればいい」という認識でいると、既に期限が過ぎており、変更できるのは翌々期からになってしまいます。また、新設法人が設立第1期から法定償却方法以外を選びたい場合は、設立第1期の確定申告書の提出期限までに届出書を提出すれば間に合います。
5. 定率法から定額法へ変更する際の計算の注意点
既に定率法で償却している途中の資産を定額法に変更する場合、変更時点の未償却残高を新たな基礎として、残りの耐用年数(または耐用年数から経過年数を差し引いた期間)で償却していく処理になります。単純に取得価額を最初からやり直すわけではないため、変更のタイミングでの計算誤りが起きやすい部分です。会計監査を受けている企業の場合、単に税務上の届出をしただけでは会計上の変更理由として十分でないこともあり、その資産の実態をより適切に表す方法への変更である、という合理的な説明が求められる点にも留意してください。
6. 実務のポイント
大型設備投資を計画している場合、定率法・定額法のどちらが自社の利益計画・資金繰りに合っているかを、投資の実行前に検討しておく価値があります。特に赤字が続いている会社は、初期に多く償却する定率法よりも、毎期均等に費用化する定額法の方が、将来の黒字化局面で税負担を平準化できる場合があります。
償却方法の選択や変更手続きについてご検討の場合は、届出期限も含めて早めにご相談ください。