令和8年分(2026年分)の年末調整では、基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件が改正されます。給与収入だけの場合、扶養親族や同一生計配偶者の目安は136万円以下となります。また、23歳未満の扶養親族がいる人には、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の特例があります。
改正は原則として令和8年12月1日に施行されます。令和8年11月までの毎月の源泉徴収事務は原則従来どおりですが、12月の年末調整では改正後の控除額を使って1年間の税額を精算します。会社側は、従業員から回収する申告書と扶養親族等の見積所得を早めに確認しておくことが重要です。
令和8年分の年末調整は何が変わる?
- 基礎控除最大104万円所得に応じて段階的に変化
- 給与所得控除最低74万円最低保障額を引上げ
- 扶養の所得要件給与136万円給与だけの場合の目安
- 一般生命保険料控除最高6万円23歳未満の扶養親族がいる場合・全体上限12万円は変更なし
主な変更点は、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の引上げ、23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例です。いずれも令和8年分の年税額や控除対象者の判定に関係します。
「給与収入」と「合計所得金額」は同じではありません。扶養親族等の正式な判定は合計所得金額で行い、本記事の給与収入額は、給与収入だけで特定支出控除などの適用がない場合の目安として示します。
基礎控除は合計所得金額に応じて変わる
正式な判定は、本人の合計所得金額で行います。
令和8年分・令和9年分の基礎控除は、本人の合計所得金額に応じて104万円から0円まで段階的に変わります。合計所得金額132万円以下の居住者は104万円、132万円超336万円以下は88万円、336万円超489万円以下は68万円、489万円超655万円以下は67万円、655万円超2,350万円以下は62万円です。
合計所得金額が2,350万円を超える部分の基礎控除額は今回改正されておらず、2,350万円超2,400万円以下は48万円、2,400万円超2,450万円以下は32万円、2,450万円超2,500万円以下は16万円、2,500万円超は0円です。
給与所得控除74万円と「178万円」の考え方
178万円は所得税計算上の一つの目安です。住民税、社会保険の扶養、勤務先の家族手当は、それぞれ異なる基準で判定されます。
令和8年分・令和9年分は、給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円へ引き上げられます。給与収入だけで、ほかに所得がなく、合計所得金額132万円以下の居住者である場合には、給与所得控除74万円と基礎控除104万円を合わせた178万円が、所得税計算上の一つの目安になります。
ただし、178万円は住民税の非課税基準、社会保険の扶養基準、勤務先の家族手当の基準ではありません。また、個別の所得控除や給与以外の所得によって結果は変わるため、「178万円まで税金も社会保険料も必ずかからない」という意味ではありません。
扶養・配偶者・勤労学生の給与収入基準
給与収入だけの場合の目安です。正式な判定は合計所得金額で行い、ほかの要件も確認します。
扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子の所得要件は、合計所得金額62万円以下へ引き上げられます。給与収入だけの場合は136万円以下が目安です。
特定親族は合計所得金額62万円超123万円以下(給与収入136万円超197万円以下)、配偶者特別控除の対象となる配偶者は合計所得金額62万円超133万円以下(給与収入136万円超207万円以下)、勤労学生は合計所得金額89万円以下(給与収入163万円以下)が目安です。勤労学生控除には、給与所得等以外の所得金額が10万円以下であることなど、別の要件もあります。
大学生年代の子は136万円を超えたらどうなる?
- 1136万円以下扶養控除を確認
- 2136万円超〜197万円以下特定親族特別控除を確認
- 3197万円超特定親族特別控除の対象外
特定親族特別控除は、親族の合計所得金額に応じて控除額が段階的に減少します。
その年12月31日時点で19歳以上23歳未満の親族について、給与収入だけの場合は136万円以下なら扶養控除を確認します。136万円を超えて197万円以下なら、特定親族特別控除の対象になり得ます。
特定親族特別控除の額は親族の合計所得金額に応じて段階的に減少し、給与収入だけの場合は197万円を超えると対象外です。親族の年齢、生計を一にしているか、他の人の扶養親族になっていないかなど、収入額以外の要件も確認してください。
23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除
23歳未満の扶養親族がいる場合、新生命保険料に係る一般生命保険料控除は最高6万円です。契約区分や旧契約との併用状況により異なります。
生命保険料控除全体の限度額は12万円のままです。
23歳未満の扶養親族がいる場合、令和8年分・令和9年分の新生命保険料に係る一般生命保険料控除は、年間保険料に応じて計算方法が変わり、最高6万円となります。新生命保険料と旧生命保険料の両方を支払っている場合など、契約区分や併用状況によって適用限度額は異なります。一方で、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除を合わせた生命保険料控除全体の限度額は12万円のままです。14万円へ増えるわけではありません。
年末調整の対象者と対象外になる人
年末調整は、原則として、勤務先へ扶養控除等(異動)申告書を提出している人について行います。1年を通じて勤務している人や、年の途中で就職して年末まで勤務している人などが対象です。
一方、主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人、災害減免法による徴収猶予等を受けた人、他の給与支払者へ扶養控除等申告書を提出している人、年末調整までに同申告書を提出していない人、一定の場合を除く年の中途退職者、非居住者、日雇労働者などは対象外です。
会社が回収・確認する書類
- 扶養控除等(異動)申告書
- 基礎控除申告書等の4種類が一体となった申告書
- 保険料控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書
- 各種控除証明書
- 中途入社者の前職分源泉徴収票
- 国外居住親族に関する書類
- 令和9年分扶養控除等申告書
会社は、従業員の状況に応じて申告書と証明書を回収し、記載内容を確認します。令和8年分の基礎控除申告書、配偶者控除等申告書、特定親族特別控除申告書、所得金額調整控除申告書は、国税庁が公表する一体様式で提出できます。
住宅ローン控除は初年度に確定申告が必要です。給与所得者は、初年度に確定申告で適用を受けた後、原則として2年目以降は所定の申告書と証明書により年末調整で控除を受けられます。
令和8年から令和9年への実務スケジュール
- 令和8年11月まで毎月の源泉徴収事務は原則従来どおり
- 令和8年12月改正後の基礎控除・給与所得控除で年末調整
- 令和9年1月以後新しい源泉徴収税額表を使用
- 令和9年1月以後防衛特別所得税1%+復興特別所得税1.1%
令和9年1月以後も合計2.1%で、合計税率の計算方法は「所得税率×102.1%」のままです。
令和8年11月までの給与の源泉徴収事務は原則として従来どおりです。令和8年12月の年末調整では、改正後の基礎控除と給与所得控除後の給与等の金額の表を使って年間税額を計算し、既に源泉徴収した税額との差額を精算します。
令和9年1月1日以後に支払う給与からは、令和9年分の源泉徴収税額表を使用します。同日以後は防衛特別所得税1%が加わり、復興特別所得税は1.1%となりますが、合計2.1%に変更はなく、合計税率は所得税率×102.1%です。
税務上の扶養と社会保険上の扶養は別制度
判定する制度
- 税務上
- 所得税
- 社会保険上
- 健康保険等
主な判定基準
- 税務上
- 合計所得金額
- 社会保険上
- 収入見込み・勤務条件等
今回の136万円基準
- 税務上
- 関係する
- 社会保険上
- そのまま適用されるとは限らない
判定先
- 税務上
- 税務・年末調整
- 社会保険上
- 加入する健康保険等
| 項目 | 税務上の扶養 | 社会保険上の扶養 |
|---|---|---|
| 判定する制度 | 所得税 | 健康保険等 |
| 主な判定基準 | 合計所得金額 | 収入見込み・勤務条件等 |
| 今回の136万円基準 | 関係する | そのまま適用されるとは限らない |
| 判定先 | 税務・年末調整 | 加入する健康保険等 |
社会保険上の判定は、加入する健康保険等への確認が必要です。
今回の給与収入136万円以下という目安は、所得税の扶養親族等を判定する際のものです。健康保険等の被扶養者認定へ、そのまま適用されるわけではありません。
社会保険上の扶養は、収入見込み、年齢、勤務条件、生計維持関係などで判定されます。19歳以上23歳未満の被扶養者(配偶者を除きます。)には年間収入150万円未満という取扱いがありますが、勤務先で社会保険の加入要件を満たす場合などは被扶養者にならないことがあります。加入する健康保険や勤務先へ確認してください。
年末調整だけでは完結せず、確定申告が必要なケース
給与収入が2,000万円を超える人や、給与所得・退職所得以外の所得金額が20万円を超える人などは、原則として確定申告が必要です。2か所以上から給与を受ける場合なども個別に確認します。
医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除の初年度など、年末調整では受けられない控除を適用する場合は確定申告を行います。年末調整後に扶養親族の異動や申告漏れが判明した場合は、勤務先で再調整できる期限・状況かを確認し、対応できない場合は本人が確定申告で精算します。
実務上の注意点
- 扶養親族等の判定は給与収入額だけでなく、合計所得金額の見積額で確認する
- 令和8年12月1日以後の扶養親族等の要件変更により、新たに対象となる親族がいる場合は申告書の提出を受ける
- 生命保険料控除は扶養親族の年齢と保険契約の区分を確認し、全体上限12万円を超えないようにする
- 中途入社者は前職分の源泉徴収票がなければ、前職分を含めた年末調整ができない場合がある
- 国外居住親族は親族関係書類・送金関係書類など、対象者に応じた書類を確認する
よくある質問
令和8年分の年末調整は何が変わりますか?
基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件が改正されます。また、23歳未満の扶養親族がいる場合の新生命保険料に係る一般生命保険料控除に特例が設けられます。
扶養親族の給与収入はいくらまでですか?
給与収入だけでほかに所得がない場合、136万円以下が目安です。正式な判定は合計所得金額62万円以下かどうかで行います。
178万円まで所得税がかからないのですか?
給与収入だけで合計所得金額132万円以下となる場合の給与所得控除74万円と基礎控除104万円を合計した、所得税計算上の一つの目安です。住民税、社会保険、家族手当の基準は別で、個別事情によって結果も異なります。
大学生の子の給与収入が136万円を超えたらどうなりますか?
19歳以上23歳未満の親族で、給与収入だけの場合、136万円超197万円以下であれば特定親族特別控除の対象になり得ます。控除額は親族の所得に応じて段階的に減少します。
生命保険料控除の上限は14万円になりますか?
なりません。一定の場合に一般生命保険料控除の限度額が6万円になりますが、生命保険料控除全体の適用限度額は12万円のままです。
社会保険の扶養基準も136万円になりますか?
なりません。136万円は所得税上の給与収入の目安です。社会保険上の扶養は別の基準で判定するため、加入する健康保険や勤務先へ確認してください。
年末調整後に申告漏れが分かった場合はどうすればよいですか?
勤務先で年末調整の再調整が可能かを確認してください。再調整できない場合や年末調整では扱えない控除の場合は、本人が確定申告で精算します。